第30回 藤沢市立高砂・浜見小学校

作文/田中(瞳)/金光/相原/面手/谷川/田中(千)/増井/添田
 日本船長協会技術顧問 池上 武男

挨拶する森本船長協会会長

 神奈川県藤沢市辻堂、相模湾の湾奥に広がる湘南海岸のほぼ中央に位置するこの地は、鎌倉幕府の戦乱の地でもあった。特に、新田義貞の鎌倉幕府攻めでは陸路を塞がれた義貞が稲村ヶ崎で剣を海に投げ入れ汐の引くのを待ち一気に鎌倉へ攻め込み、北条一族を滅ぼし鎌倉幕府の滅亡に至る話は有名である。もともと砂丘が広がるこの地は、雑穀と野菜を産し相模湾の海岸漁業を生業とする半農半漁の土地であった。八代将軍徳川吉宗のときにこの辻堂の砂浜が幕府の鉄砲場になったことから、明治以後、帝国海軍の陸戦演習場となり大東亜戦争時代には盛んに演習が行われ、戦後は連合軍に接収され米軍による演習場として使われていたが、昭和34年にこの辻堂演習場が日本へ返還され、跡地には学校、団地が次々と建設され水際の海岸は緑地公園とな り市民の憩いの場になっている。

 昭和36年に私立湘南工科大学とその附属高校が開設されると37年には白浜養護学校、39年に高砂小学校ついで45年に浜見小学校が、そして48年に高浜中学校が隣接した敷地内に開校した。

講演中の池上船長

 神奈川県藤沢市が実施している子供たちの健やかな成長を支援するための学校・家庭・地域の連携推進事業で「高浜地域子ども支援会議」の会長をしている辻橋昭雄氏から、海の近くに住んでいるにも係わらず子供たちがあまりにも海を知らない、多くのことを海に依存している我が国の子供たちは、もっと海や船のことを知って衣食住の多くを海運に頼っていること、そしてそれに携わっている船員のことをもっと知ってもらいたいと、(社)日本船長協会が日本財団の助成を受けて実施している「子供たちに海と船を語る」事業の実施を学校側に働きかけた。

 辻橋氏は元船長で私達の先輩である。先輩からの依頼を受けて、船長協会は事業担当の伊東常務理事が辻橋会長及び学校当局と綿密な打ち合わせを行い、藤沢市辻堂西海岸の高砂小学校(小池洋子校長)と隣接の浜見小学校(佐藤文雄校長)の5、6年生の子供たち約270人及び若干の父兄と市教育関係者を対象に実施する事になった。開催日時は、6月18日金曜日の午前10時45分から12時の間で、終了後には子ども達と学校の給食を一緒に食べながら懇談するという段取りであった。

講演風景

 当日は、協会の森本新会長と常務理事の伊東船長、それに講演をすることになった私がJR 東海道線辻堂駅に集り10時に学校へ着いた。到着後3人は夏制服に着替え、校長先生他に挨拶、ビデオテープ「海と船」、「コンテナ船」、「地球環境と海運」、協会作成の記念グッズ及び日本船主協会作成のパンフレットなどのお土産を会長から学校に贈呈したあとプレス・インタビューを終えて子供たちが待つ体育館へ入った。平成7年に校舎と共に改築された体育館は小学校の設備とは思えないくらいに整った立派なものでした。

質問する生徒

 高砂小学校の倉先生の司会で講演会は始まり、小池校長先生、森本協会会長及び「子ども支援会議」辻橋会長の挨拶に続いて私の講演になる。先ず、自己紹介を兼ねて私が船員を志したきっかけを話し、協会作成のDVD「海と船」を上演する。引き続いて残りの30分で時間的には厳しかったが、過去40年間に私が経験した知見の中から、海の大切さ、船員の仕事、船員は立派な国際人であること、そして最近の国民的な関心事でもある国際テロ事件に関連して現代の海賊の話、最後に私自身がもっとも印象に残った航海の話などを手持ちの写真や資料からパワーポイントに取り込んだ画像を上映し話した。

 小学校5、6年生の知識レベルが未知数で、話の内容がどのくらい理解できたか少し気懸かりであったが、講演後の質問時間に入ると、いっせいに質問攻めに合いDVD の内容や私の話を的確に理解していたことに驚くとともに非常に嬉しかった。最後に、両小学校の代表生徒3人によるお礼の言葉を受けて講演会は無事に終了した。その後、6年生生徒3クラスにわかれた各教室で森本会長、伊東船長、私が夫々のクラスに混じって給食を共にし、そこでもまた質問やら雑談で盛り上がり楽しく、また貴重な時間を過ごした。

給食を一緒にしながら懇談
する池上船長と子供たち

 翌日の地元新聞には、切抜掲載のような記事で紹介され、また藤沢市広報番組「ウィークリー藤沢」ジェイコム湘南ケーブルテレビでも放送された。後日、辻橋会長の談では、非常に評判がよくて他の学校から是非お願したいとの要請があり悩んでいるとのことであった。

 最後に、講演会の実施に当たり、受け入れ準備、機材の準備及び設置、また講演会の進行などに多大なご協力をいただきました高砂小学校の倉先生をはじめ教職員の方々、また全面的なご支援をいただきました両小学校校長先生並びに教育関係市職員の方々に厚く御礼申し上げます。

掲載された新聞記事  ※画像をクリックしてください


朝日新聞記事
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LastUpDate: 2024-Apr-17