葛西会長 年頭の挨拶

 


 海陸でご活躍の会員の皆様、明けましておめでとうございます。
 謹んで初春のお喜びを申し上げますとともに、本年も会員の皆様の健やかなご発展を心から祈念申し上げます。
 平成31年を迎えましたが、本年5 月1 日には皇太子殿下が新天皇に即位し、新たな年号が制定される予定となっておりますが、どんな年号になるのでしょうか?
 米中の貿易摩擦など世界情勢が不安定ですが、世の中が平和で益々発展するような年号を期待します。
 今年は昭和にすれば94年、新元号になると平成の前の昭和生まれの人の年齢は換算表でもないとわからなくなってしまいそうです。
 明治にすると151年。あまり認識されていなかったようですが、昨年は明治150年で、我が国初の洋式灯台である観音崎灯台が明治元年11月1 日に起工されてから、150年目の佳節に当たり、間もなく即位されるご予定の皇太子殿下、妃殿下ご臨席のもと、燈台150周年記念式典が執り行われました。
 灯台と言えば、海上を航行する船舶にとっては、無くてはならない道標であり、新米航海士は、灯台の方位を測定し、クロスベアリングにより船舶の位置を決定する訓練を重ねて、測位精度の向上に励んだものです。また、沿岸航海では灯台からの距離と方位により変針点を定め航海計画を策定し、常に灯台を目標として操船をすることが多く、我々船長、航海士にとって、灯台はとてもなじみの深い存在でした。
 明治、大正、昭和にかけ多くの西洋式灯台が建設され、海の道標として海上交通の安全を保ってきましたが、150年を経た今、RADAR、GPS、ECDIS 等の航海機器類の技術革新により、灯台への依存度が減少しつつあるようです。しかしながら灯台は自らの目で視認し確実に相対的な位置を確認できる存在であることに変わりはありません。先人が苦労して守り続けてきた灯台の灯はこれからも永遠に海上を照らし続けてくれることでしょう。
 昨年11月1 日は奇しくも準天頂衛星システム「みちびき」によるサービスが開始された日でもありました。GPS と「みちびき」による位置測定精度は、数センチまで縮小できるとのことですが、皆さんのクロスベアリング技術による位置とその精度を比較してみては如何でしょうか。
 新年早々、少々ノスタルジックな話題から始まりましたが、IoT によるBIGDATA の蓄積とAI の活用と言った新しいデジタル技術の登場による昨今のデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)の加速で、我々海技者に必要とされる技能、技術、および知識は、急速に高度なものになってきています。
 昨年5 月に開催されたIMO MSC99では自動運航船の国際ルール策定にむけた議論が開始され、その定義や自動化レベルの暫定案が合意されました。日本国内でも、国土交通省海事局、海上保安庁等の政府機関や海事センター等関連団体で自動運航船への対応にむけた勉強会が設置され、安全性向上への期待が高まっています。
 この様な状況を受け、国際海運会議所(ICS)では自律運航船の出現が船員の役割や海運産業に与える影響を次のように発表しています。

①向こう10~20年間の間に、船舶1 隻あたりの乗組員数は減るが、完全に自律運航する船舶は少数にとどまる。一方で、海運に従事する船舶の数は増えるので、船舶職員の総数は現在と変わらない。さらに陸上の運航支援センターで業務に従事する船員の数は大幅に増加する可能性がある。

②この移行期間に新たな船員に求められる資質に対応できるよう、デジタル化に対応した再訓練を行うことができる。

③船舶の自動化は安全性を高め、事故に伴う環境リスクも減少させるだけでなく、船員の労働災害のリスクも大幅に減らす。

 ノルウェーやフィンランドでは、完全自律運航船のプロジェクトが進み、地域を限定した小型フェリー、コンテナ船での完全自動運航の実験に成功したと報告されています。
 日本の大手海運会社も、船舶運航要員の負担軽減、ヒューマンエラーの防止、能率運航の向上を目的とし、メーカーや研究所と連携し自動運航船の研究開発に取り組んでいますが、正にこの報告書は我々海技者の将来像を如実に語っているように思います。
 日本の海事産業がさらに飛躍していくためにも、今後日本人海技者に求められる優秀な人材を確保するため、産官連携して教育体制を確立し、また、現役の海技者も自らデジタル技術に精通し、その知識と経験を活用することで、自動運航船等による最先端の海上輸送システムを構築していくことが理想の姿だと考えます。
 新たな年号の幕開けにふさわしく、会員の皆様が海技者として大きく飛躍し、海陸で益々ご活躍されます事を期待いたします。
 今年も当協会は、皆さんのご要望を取り入れ多くの会員の皆様が参加して頂ける様、当協会の活性化に取り組んでまいります。引き続
き皆様からのご支援、ご指導を賜ります様、お願い申し上げます。
 最後に皆様のご安航を心よりお祈りし、新年のご挨拶とさせていただきます。


LastUpDate: 2019-Oct-17