第42回 愛知県一宮市立小信中島小学校

作文/岩田/小谷//川尻/後藤/林本
 (社)日本船長協会 副会長  赤塚 宏一

1.開催に至った経緯

€ € €  母校である愛知県一宮市立小信中島小学校(「このぶなかじま」と読みます)へ行って来ました。2005年4月に合併して一宮市となりましたが、もともとは尾張の西部にある町として尾西市を名乗っておりました。ここは古くから毛織物の町で、いまでいう繊維業の産業クラスターがあり、町は活況を呈しておりました。 € € €

€ € €  私はこの小学校へ4年生の始めに転校してきたのですが、それまで通っていた岐阜県の小学校や満州の小学校と比べて町の小学校へ来たのだなと感じました。町とは言え周辺には自然がたくさん残っており、特に木曽川は夏の水泳はもちろんのこと何かにつけ遊びに行きました。4年生は2クラスで私の入った東組は男子生徒19名、女子生徒26名計45名の良くまとまったクラスでした。小学校時代の私といえば成績はともかく、かなりの問題児ではなかったかと思います。よく喧嘩もしよく叱られました。クラスメートに迷惑をかけたことを反省しています。しかし楽しい時代でした。もしタイムスリップ出来るなら真っ先に戻りたい懐かしい日々です。 € € €

€ € €  商船大学に入り、船に乗りまた長い間外国勤務をしていたため小学校とは全く疎遠となっておりました。英国から帰国して日本船長協会の副会長に就任したので、日本船長協会のもっとも大事なプロジェクトの一つである「子供たちに海と船を語る」について、いつかはお役に立たねばと思っておりました。これまで40数回を数えるこの講演会が一度も愛知県で開催されたことがないとの話を聞いて覚悟を決めて(ちょっと大袈裟ですが)小学校の橋本教頭先生にお電話しました。突然の電話にもかかわらず橋本先生は私の話を快く引き受けて下さりホッとしたのを覚えております。 € € €

2.講演会

€ € €  講演の準備のために過去の諸先輩の記録や森本日本船長協会会長の用意したスライドやDVD を見ますと大変よく出来ており、海や船については行き届いた説明がされているので、私はロンドン時代の話をすることとしました。今日船員になることは船に乗るだけではなく、多方面で活躍する場があること、毎日の生活も世界と結びついていること、海を守り地球を守るには世界の人たちと国際的なルールを作る必要があることなどを話したいと思いました。スライドの原案をつくり、いつも講演の資料作りを手伝ってくれる大学院生にイラストを入れて仕上げてもらいました。 € €

€ € €  スライドの終わりに小学校向けの神戸大学のPRもちょっと入れました。(大学全入時代を控えて大学間の学生獲得競争は厳しいのです)子供達が多少ともこうしたことに興味を持ってくれたとしたら、それは楽しいスライドのせいです。 € € €

€ € €  講演のあと質問の時間がありましたが、驚いたことに数十人の手が挙がりました。それを教頭先生が上手にさばいて5人ずつ、計10回の質問を受けました。質問は船の値段、船に乗ってたのしかったこと、温暖化はどんな影響が出るのかなど、きわめて的確かつ講演の内容を理解したもので感心しました。経験豊かな森本会長に聞くとこんなに活発な質問が出るのは珍しいとの事でした。講演の終わったあと、下校時の子供たちに囲まれ、握手を求められたり、サインまで求められ嬉しく思いました。申し上げるまでもなく(私もまったくミーハーの部分がないわけではありませんが)、サインを求められたことが嬉しいのではなく、現代の子供達はもっと白けていて、自分に関わる物にしか興味を示さないのではないかとの先入観があったのが、子供達の活発な質問や旺盛な好奇心により覆されたことが嬉しく思いました。 € € €

校長先生挨拶 講演する赤塚船長
校長先生挨拶 講演する赤塚船長
聞き入る児童 質問に手を挙げるこどもたち
聞き入る児童 質問に手を挙げるこどもたち

3.むすび

€ € €  今回小信中島小学校で講演を行うことは、恩師の稲葉登志子先生にのみお知らせしていたのですが、当日ご高齢の先生がわざわざクラスメートの皆さんに連絡して下さり皆で講演会に出席して下さいました。また一宮高校の音楽部で一緒だったソプラノの森さんが(believe it or not ですが私はテナーでした)、お孫さん(そうです、小学校はもうだいぶ前から孫の世代なのです)への学校連絡で私達が学校訪問をすることを知り、高校時代の同窓生に連絡して下さり、懐かしい友達と会うことも出来ました。感謝です。 € € €

€ € €  英国ではSealine と言って、現役の船乗りが各地に寄港の折に地元の小学校を訪問する、あるいは子供達を船に招待するプロジェクトがあります。船と学校との往復書簡が機関誌に掲載されたりして、海事思想の普及に役立っているようです。昔から日本人の海への関心の薄さは変わりませんし、そのうえ少子化の影響もあり、旧商船学部が優秀な学生を獲得することはますます難しくなるでしょう。この日本船長協会のプロジェクトはなにも船員教育のためにのみやっているわけではなく、子供たちに少しでも海に関心を持ってもらいたいとの願いだと思います。後援して下さる日本財団の思いも同じでしょう。日本船長協会のこのプロジェクトがいつか成果となって現れること信じ、そのために及ばずながら私も積極的に参加して行きたいと思います。 € € €

€ € €  最後になりましたが、こうした機会を与えて下さった小信中島小学校の常川校長先生、橋本教頭先生に、また日本船長協会の森本会長、原田船長に厚く御礼申し上げます。 € € €

€ € €  <日本船長協会副会長 赤木・記> € € €

お礼を述べる児童 児童代表に世界地図を贈る
お礼の述べる児童 児童代表に世界地図を贈る
42回新聞記事
作文/岩田/小谷//川尻/後藤/林本

LastUpDate: 2024-Apr-25