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2026年の年頭にあたり、謹んで初春のご挨拶を申し上げます。
2026年は1950年に日本船長協会が設立されて76年目、既に三四半世紀が過ぎました。社団法人としての日本船長協会の発足は1959年5月で本年度の総会は第68回となります。また、日本の海事産業にとって大きな転換期となったプラザ合意が1985年で、本年で41年目となります。日本船長協会設立後の三四半世紀の間で、このプラザ合意以降の40年が、ある意味での新しい海技者を代表する船長、航海士、水先人らの組織である社団法人日本船長協会を育んできたものと感じています。円高が進んだプラザ合意以降、小職が海運会社に入社したころのような、日本船籍の船に全員日本人の乗組員と云う時代は終焉を迎えました。外航海運は空運と比較しても国際的な自由競争の中でビジネスを展開しており、現場の最前線にいる船長ら海技者は多様な国籍の人たちと協調して船舶の運航、また船舶管理等に携わっています。また、我々の職場でもある海上において、この三四半世紀、残念ながら国際紛争が無かった時期はありません。
この様な外航海運の社会環境の中、日本人海技者の減少、補助金の打切り等、この40年、日本船長協会も運営上の種々の課題を抱えてきました。しかしながら、特別賛助会員となって戴いている水先人の方々の支援をも受け、協会の目的である「船長の識見の涵養と技術の研鑽を行うとともに、船長の職務に関連する諸問題を調査研究することにより、海運ならびに海事の発展に資する」に向い進んでいます。以前に比べ組織は小さくなりましたが、事業内容は新しい時代に向けて発展してきています。
社会的に意義のある活動を行うことにより、海事社会の発展、船長をはじめとする海技者の地位向上につながるものとも考えております。既に会報等を通じて紹介、報告済ですが、従来の事業活動に加えて、昨年から本年にかけて、大きな事案二件が動いております。一つは海事局、NKが進める自動運航船の自動避航システムの安全基準、認証基準に日本船長協会提案の基準を取り入れ、本年実証実験を行う内航自動運航船の認証等に適用したこと。もう一件は1968年に定めた日本船長協会自主分離通航方式の一部見直し検討を行い、IMOの推薦航路とすべく、海上保安庁に要望書提出の準備作業を行っていることを挙げることができます。
前者の自動運航船の検査・認証基準は、数年前に実施した日本船長協会とClassNKとのCOLREGsに関する勉強会から始まったものです。内航船の船員不足が深刻化する中、少なくとも日本沿海を航行する船舶の自動運航を目指し、官民挙げてプロジェクトが動き出しました。海事局、ClassNKは「従来船と同等な安全レベルでCOLREGs遵守」が重要との認識のもと、日本船長協会提案の基準を主要な評価指標として採用したものです。昨年末から今年にかけて、実証実験を行う船舶の検査・認証に適用されましたが、その過程で、日本船長協会が提案した「先行避航」の概念が実際に評価を行う関係者の中に定着したようです。
「先行避航」の概念とは、「我々船長が自動航行システムに相当する新米航海士に当直を任せているとした時、保持船だからと云って安易に遭遇他船に近づき、最善の協力動作を行う必要に迫られて船長コールするのではなく、衝突の虞が発生する前に(保持義務が発生する前に)僅かに針路変更等の操船を行う航海士(システム)の方が安心できる」と云う概念です。具体的には、通常の避航操船の基準と共に、「相対距離」と「方位変化率」でその概念の客観的な基準を定めたものです。(ClassNKが昨年の1月に出したガイドラインでは「評価領域図」として記載されています。)この基準を定めるにあたっては、延べ1600人の船長協会会員の皆さんの協力を得て大規模な検証実験、アンケートの実施を行って策定した基準です。このような、国や船級の基準策定に海技者集団である船長協会が積極的に参画していくことは、協会の社会的活動の意義を高めるものであると考えています。本年は、再度ClassNKからの委託により、国内基準のみならず、国際的な基準とすべく、更に検証を重ねる業務の委託を受けています。
自主分離通航方式の見直しは、電子海図が強制となった現在の運航に合わせるべく、電子海図上に表記されるIMOの推薦航路とするため、海上保安庁に要望書を提出していくと云うものです。昨年、海上保安庁もオブザーバーと云う立場で参加していただいた協会内部の委員会において、現状の自主分離通航方式をIMO推薦航路としていく方針が合意されました。その後、海上保安庁との協議を進める中で、IMOの推薦航路とするには、その理由付けを含め、相当な資料の用意、手続きを踏む必要もあり、まず、省内での予算確保に向けた準備を行う必要があるとの助言を受けています。本年は、優先順位の高い、東京湾湾口洲埼沖の自主分離通航方式をIMOの推薦航路とすべく昨年に引き続き、更に検討を重ね、海上保安庁に要望書を提出していく準備を行います。実現までには時間がかかりますが、重要案件の一つとして進めていきます。
現在の日本船長協会は会員の皆さんの会費のみで運営している社団法人となっています。プラザ合意後の国際競争の中での新しい日本人海技者集団として特別賛助会員である水先人、また水先人会連合会等との協業によって水先人候補生の養成を含め、海事社会の発展に尽くしてきています。昨年、若い一部水先人の方の退会が連続した時期がありましたが、海技者集団として海事産業を発展させていく組織を目指していきます。今後共御支援宜しくお願いいたします。
最後に今年の会員皆様のご健勝とご活躍を祈念し新年の挨拶とさせて戴きます。
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