就任にあたりまして

平成29年度総会において、前任の小島会長の後を引き継ぎ、当協会の会長を務めさせていただくこととなりました葛西です。

   就任のご挨拶に当たり、先ず三期6年間当協会の会長として、強いリーダーシップを発揮され当協会の事業を推進されるとともに、船長と言う職務を代表して、海運並びに海事の発展にご尽力されました小島前会長に心から敬意を表するとともに、この場をお借りして深く感謝申し上げます。

   当協会の会長をお引け受けすることとなり、その重責を思うと不安と緊張の念を禁じ得ませんが、会員各位、関係団体の皆様のご期待に沿うよう、当協会の運営に全力を傾注して参りたいと存じます。

 当協会は昭和25年に発足し、以来今年で68年目を数えます。
 私は約16年間当協会の理事としてその運営をお手伝いさせて参りましたが、その間、諸先輩の方々の強い団結力と英知の結集により、数々の障壁を乗り越え今日まで無事運営されて来た現状を、目の当りに見させて頂きました。
 正会員、航海士会員、賛助会員、及び特別賛助会員の皆様のご協力とご理解を得る上で、特にコンプライアンスを重視した規約を制定し、協会の厳格な運営に取り組んできたことについては、私も非常に注視しており、引き続きこの方針を踏襲してまいる所存です。

 また、当協会は、衆議院の海賊対策特別委員会における参考人としての意見陳述、本協会の設定した自主分離通行方式を反映した仮想ブイの設置の実現に向けた活動、および海上交通安全、海難防止に関する各種検討委員会での意見具申等、現場で船舶運航従事する船長、航海士を代表し意見、要望を社会に発信していくことで、航行船舶の安全と海上交通の秩序維持に貢献してきました。私も、当協会の役割の重要性をしっかりと認識し、皆様の期待に答えうるべく努力して参ります

   私は1977年、東京商船大学を卒業いたしましたが、我々の世代は円の変動相場制への移行、オイルショックに始まり、G5プラザ合意(1985年)による急激な円高と言う時代背景の中で、我が国海運は国際競争力のため大幅な構造転換を図った時期にあたります。
そのため、海運会社が採用を控えた事情もあり海運界に進んだ人材が非常に少なく、所謂ワイングラスと言われた船員年齢構成の首の部分の世代に当たります。 
 平成に入り、海技者の採用が漸増し、多くの若い世代の海技者が海運界で活躍するようになってきましたが、40数年前に我々世代が受けた商船教育も時代とともに様変わりし、全寮制と言う集団生活の中で培った船乗り気質も、現在では個人の創造性や斬新的な思考を尊重した教育の中で大きく変貌しているように見受けられます。また、近年では商船教育機関以外の大学出身者が海技者として海運会社で養成され、海陸で活躍しております。

 海技者の採用が増えたとは言え、我が国の海事クラスターの中で枯渇してしまった海技者が一朝一夕で補充されることは不可能であり、現状では水先人、海技試験官、海難審判官や、バースマスター、安全監督と言った部門で人材不足が顕著となっていると言われております。  海運会社は営利企業であり、自社のため海技者を育成しており、外部に輩出できる海技者には限界があるでしょう。
 当協会の会員である船長、航海士を含む船舶職員は、従来の船舶運航要員という位置付けから、陸上において船舶の安全、能率運航管理や営業、オペレーション部門の技術支援といった、海運会社の主要サービスである海上運送サービスを支える技術者としてのニーズが益々拡大しています。
掛かる状況の中で、当協会としては、船長と言う職務を通じた横断的な団体として時代のニーズに即した船長の識見の涵養と海技の研鑽に努め、当協会の事業を通じ海運会社を含む海事クラスター全体での質的、量的海技者の維持、向上に貢献することで日本海運、海事産業の発展に寄与して行きたいと考えています。

 就任早々、当協会の今後の事業活動に関し新たな方針、目標を皆様にご提案するには時期早々と心得ております。先ずは今年度の理事会で承認された事業を効果的に達成することに全力を尽くしてまいります。
特に前年度より取り組んでおります国際法に関するハンドブックの作成事業につきましては、現在の世界情勢に鑑み、当協会会員のみならず多くの海運関係者に有益な産物とすべく先人の皆様のお知恵を拝借しシッカリした内容に仕上げて行きたいと思います。
長年取り組んでいます「子供達と海を語る」の諸講演事業についても、若い世代の人々への海事に関する知識の普及と海事教育の振興活動の一環として更なる効果的な取り組みを目指します。

   これらの事業活動には何よりも当協会会員はもとより、海運会社を始めとする関係団体の皆様のご理解とご協力なくして成果は期待できません。今後とも当協会が海運、海事の発展に有意義な活動を進めていくため、皆様の忌憚ないご意見を賜れば幸甚と存じます。

以上


LastUpDate:2017-07-11