森本会長 衆議院参考人招致

森本会長衆議院『海賊特別委員会』 の参考人招致! 写真協力 社)日本船長協会会長の森本でございます。 この度は、船員の声を聞く機会を与えて頂きましたことに、まず感謝申し上げます。そして正直に申し上げて、やっとという気持ちもいたしますが、ソマリア海賊対策のために自衛艦を派遣して頂きましたことに対し、船長を代表して心から御礼を申し上げます。 本題に入る前に、船長の職務と権限について簡単に説明させていただきます。船員は、労働保護や行動規範を規定した『船員法』の適用を受けます。同法では、船員を『船長』と『海員』に区分けして規定しおります。船長の主な職務には、 ○ 海員を指揮監督し、職務上の必要な命令をすること(7条) ○ 生命、身体、もしくは船舶に危害を及ぼすような行為をしようとする海員、旅客に対して、危害を避けるために必要な処置をとること(25条~27条) 更に、刑事訴訟法には、船長は司法警察権の職務を行うと規定しています。 これらの規定は、船内にある者が加害者と被害者になることを想定した規定であり、銃器はもちろん警棒すら所持しない船長が取れる抑止措置には限界があります。したがって、 ○ 船員法(29条)では、船長は、必要とあれば行政庁に援助を請求することができると規定しています。 以上に紹介した諸規定を駆使しても、機関銃やロケットランチャーを所持する海賊に立ち向かうことは、到底不可能であります。 そして、これらの諸規則は『海賊』の存在を全く想定しないで制定されたものと考えられます。 また、船員法第14条には、船長は、他船の遭難を知った時は、自船に急迫した危険がない限り、人命の救助に必要な手段を尽くさなければならない、と規定しており、同様の条文は、国連海洋条約第98条にもあります。 あれは何々国の船だから、俺は行かない。などということは許されません。船長としては、救助に行けば予定が遅れ、会社に迷惑が掛かるという気持ちを抑え、人命救助という崇高な使命を果たすべく救助に向かいます。このように、他船の遭難を救助する義務は国際ルールであり、言わば海の男の仁義でもあります。
写真協力 さて、ソマリア沖を通行した船長の報告を少し紹介させてください。漁船を見れば海賊船ではないかとびくびくし、まるで富士川の合戦で水鳥の羽音で敗走した平家軍のような気持ちで、船長は、神経を最大限に張り詰め危険海域に臨んでおります。操舵室にある国際VHFには、付近航行中の船舶の通話が聞こえてきます。夜間、近くの船がハイジャックされた様子を知らせる、日本人船長の報告を紹介します。 『小さな船がそばを離れない。発砲してきた。海賊だ。助けてくれ』とVHFで多国籍軍の軍艦を呼び出す悲痛な叫びがあり、暫くして軍艦から『貴船の位置を知らせ』の応答、その後15分程沈黙が続いた後、悲しそうな声で『乗っ取られた。頭に銃を突きつけている。他船が近寄ったら人質を一人づつ殺すと言っている。頼むから誰も来ないでくれ』と。 その船は、居住区の明かりも、航海灯までも消して真っ暗な状態で航海していたが、ハイジャックされた直後に、突然明々とすべての照明がつき、やがて静かにソマリアの方向へ消えていったと。 昨年4月、日本の大型タンカーが銃撃を受け、船体に穴をあけられながらも何とか振り切ろうとしている現場に、ドイツの軍艦エムデン号が猛スピード駆けつけ海賊を追っ払ってくたことがありました。乗組員はエムデンの名前を一生忘れないだろと船長は言っておりました。以上のように、無線による悲痛な叫びを聞き取った経験をもつ船長は数多くいます。次にご紹介するのは、自衛艦が現地で警備の任務に就いてからの最近の報告です。これは日本人船長のからの報告です。『初めて自衛艦のエスコートを受けて航行したが、自国艦船の護衛を本当に誇らしく思った。部下のフィリピン人たちの顔も明るく、日本人を一段とレスペクトしてくれているように見えた』ということであります。 また、日本関係船の外国人船長の報告では、『集合地点到着の2時間前からVHFにて交信。航行時のスピードとコースなどの指示を受けた。船団を組んでから航行中の交信は少なく、ヘリコプターが着艦する時にコースを変える程度の指示しかない。小舟が接近したとき直ちにヘリコプターが巡見にきた。行動はエクセレントでプロフェッショナルであった。この活動は乗組み全員の士気を高めてくれ、心から感謝したい』という内容です。 これまで海賊対策に派遣された艦船は、欧米主要国の他、ロシア・中国・インド・マレーシア・イラン、そして最近では日本・韓国など数多くの国が、警備行動に従事しています。 これらの国が実施しているエスコートは、保護対象船に優先順位をつけ、自国の関係船が優先されているようです。しかし船団に入れて欲しいという船を無碍に断った例を聞いておりません。それどころか、攻撃されている他国の船舶を救出したケースは数多くあります。 * 北朝鮮船を米軍が  * 台湾のタンカーを中国軍が * マースク社のコンテナ船をロシア軍が *中国船をマレーシア軍が * 中国船をデンマーク軍が。  など多くの事例があり、 海の男達は国境を越えて救助活動をしています。 現在、規模の違いはありますが、20カ国に近い国々から艦船が派遣されています。しかし何処の国も、救助すべき対象船に制限を設けているという話は聞いたことがありません。 先ほど紹介した日本人船長からの報告では、自衛艦の船団に組み入れて欲しいと要請してきたある船舶に対して、自衛艦側は『貴船の船主に連絡して救助の可否を検討する』と歯切れの悪い応答ぶりであったと言っております。 冒頭で紹介しましたように、海上において、遭難した船舶の救援に駆けつけることは、国籍に関係なく『海の男の仁義である』と申し上げましたが、危険海域での緊張した雰囲気の中にいる現場の担当官が、どんなに歯がゆい思いをして、このような応答をしているだろうか、また、そのやり取りの一部始終を聞いている他の船の船長たちが、どのように思っているだろうか、それは、想像に難くないところであります。 今日、各国がいろいろな思惑を持ち、国連の安保理で全会一致にて決議が採択されることが珍しい中にありまして、こと海賊対処に関しては、昨年2回も全会一致で決議されています。これは、海賊行為が人類共通の敵であるという認識を世界中が共有している証でありましょう。 国民の生活を影で支えている船員たちの安全を守って下さい。 そして、日本の海の男たちに肩身の狭い思いをさせないようにしてください。よろしくお願い申し上げます。 有難うございました。

LastUpDate:2017-11-06