小島会長 年頭の挨拶

 

 

 明けましておめでとうございます。

 今年はどのような年になるでしょうか。昨 年は世界経済の停滞から外航海運事業におい ては、円安と燃料油価格の低下にも拘らず、 業況の低迷が報じられています。また、ソマ リア沖をはじめとするインド洋西部の海賊事 犯は、わが国自衛隊の他、各国艦艇の警備に より鎮静化が見られるものの、アフリカ西岸 など一部の海域では海賊事犯が後を絶ちませ ん。さらに、イスラム過激派の活動に端を発 するシリア情勢の混乱により、地中海におい ては、膨大な数の難民がヨーロッパを目指し て漂流するなどの他、各地に多発するテロが 深刻な事態を招いています。
 一方、わが国では、長引く経済の停滞、雇 用情勢の変化等から、「貧困児童」、「下流老人」 などの問題が指摘され、財政健全化、TPP への対応、消費増税など難問山積の状況にあ ります。
 このような社会情勢にはありますが、国民 の生活と産業を支える海運産業にあって、私 たちは常に「船舶の安全運航」を第一に考え、 そのための活動を続けていきたいと思います。

 さて、現在、日本船長協会は、技術力アッ プに寄与する教育用DVD の作成に取り組ん でいます。昨年作成した『BRM を支える個 人の技能 (経験の浅い航海士の技能を向上さ せるため)』を第1 弾とし、今年度は『BRM の効果的な実践に向けて(仮題)』に取り組 んでいます。3 月末に完成の予定です。安全 運航に向けてご活用いただければ幸いです。
 「子供たちに海と船を語る」活動は、16年 目に入りました。訪問した学校等の数は全都 道府県、153校、生徒数は2 万4 千人を越え ました。「海の魅力」、「船の役割」、「船の仕事」 について話をしてきました。彼らから、「興 味を持ちました」、「将来、船員になりたい」 等の感想文も届きます。今年も中学校をター ゲットに十数校での講演を予定します。何よ りも先生方に関心を持って頂くことが効果を 高めることにつながります。また、昨年は日 本財団、MOL マリンの協力を得て、初めて 「操船シミュレータ」を用いた体験イベント を実施し、児童・父兄から好評を頂きました。
 なお、昨年7 月に東京で開催されたIMO Maritime Day(世界海の日)のパラレル・ イベントにおいて、海と船および船員につい ての知識と理解を拡げる活動をする「IMO 海事大使」に私が当協会会長として任命され ました。その期待に応え、更に工夫を加え、 本事業を展開していく所存です。
 次に、当協会が日本船主協会の協力を得て 調査研究し、海上保安庁の了解を得て、1970 年に設定したわが国沿岸の準輻輳海域での自 主設定分離通航方式に関連しますが、海上保 安庁の委員会では近年のAIS 技術を用いる 検討が進められています。最初の検討水域は 伊豆大島西方です。電子海図上の当該水域に バーチャルブイ(仮想ブイ2 点)を設け、そ の間に分離線を電子海図に表示し、船舶交通 の整流化を図るものです。当協会は本事業を はじめ、各種の航行安全に関する検討会に積 極的に協力してまいります。

 さて今年のスローガンとして『見張りと、 航海計器のデータの活用、そして安全な判断 を』(真のプロフェッショナルへ)を呼びか けていきます。AIS、ECDIS 等の航海計器 類の導入、また性能の向上により、多くの情 報が提供されるようになっています。しかし、 安全な操船はあくまでも「見張り」に基づく 視覚情報が主です。その視覚情報とAIS、 ECDIS 等からのデータとを整合することで、 より安全な判断につなげることができると思 います。
 また、操船のみならず現場での安全管理者 として「安全最優先の意識」と情報を共有す る「三つの力」を身に付けることも大切です。 それは、
 ①気付く力(リスクの感受性): 現場で起き ていること、起きそうなことに気付く力。
 ②伝える力(説明する力): 伝えるべきこと を理解しやすく端的に伝える力。
 ③報告する力: 現場のリスク(起きているこ と、起きそうなこと)を自分の 意見を添 えて報告する力。
です。
 「真のプロフェッショナル」の力を発揮し て安全航行を達成して下さい。

 船長はじめ乗組員皆さま、航海中そして停 泊中、毎日忙しいことと思いますが、ご健康 とご多幸、安全な航海を祈念申し上げます。


LastUpDate:2017-11-06