葛西会長 年頭の挨拶

 

 日本船長協会の会員の皆様、新しい年を迎え如何お過ごしでしょうか。
謹んで初春のご挨拶を申し上げます。

 昨年は、一昨年末から年初にかけての人流の増大により、新型コロナの感染者数が再拡大し、新年早々1 月8 日には東京及び首都圏3 県に緊急事態宣言が発令されました。その後7 府県に拡大され、延長、再延長を繰り返し3 月21日に漸く解除されました。
 4 月25日のゴールデンウイーク中に出された3 回目の緊急事態宣言は6 月20日まで、引き続き、蔓延防止等重点措置の続く中7 月12日には4 回目の緊急事態宣言に逆戻りし、10月1 日にすべての地域で緊急事態宣言の全面解除に至るまで、緊急事態宣言の期間はなんと273日のうち211日間に及びました。
 多い時には毎日2 万人を越える感染者が報告され、医療体制の崩壊も危惧される中、多くの国民が不安を抱えて生活をする日々が続きました。
 一方、高齢者から順次ワクチン接種が開始され明るい兆しも見えてきた中で、2020東京オリンピック、パラリンピックが無観客という条件下でしたが無事開催されました。
 コロナ禍での不安、景気低迷、国際的紛争の懸念と言った暗い社会情勢の中で、世界各国から東京に参集したトップクラスのアスリートの素晴らしい活躍に励まされた人々も多かったのではないでしょうか。
 東京オリパラの開催で感染が拡大するのではとの専門家の予想とは裏腹に、急速に感染者数も減少し、昨年11月1 日から殆ど全ての制約が解除されて漸く、人々の生活、社会、経済活動の早急な復帰に向け、日本中で活動が開始されています。
 新型コロナの治療薬も開発されており、今年は希望をもって躍動感のある年になる事を期待しています。
 海外では、未だ感染拡大が終息せず、制約された生活を余儀なくされている地域もあり、外航船で働く船員も、乗下船時の制約、船内での感染防止、ワクチン接種等困難な課題の中、エッセンシャルワーカーとして使命を果たすべく頑張っています。彼らの真摯な頑張りに心より敬意を表すると共に、早期の事態改善に向け、関係方面に働きかけを行って参ります。

 さて、海上に目を向けてみると、近年は前代未聞ともいえる大きな事故が相次ぎ発生しています。
 一昨年7 月には、日本の大手海運会社が運航するケープサイズバルカーがモーリシャスの南東部沖でサンゴ礁に乗りあげ座礁、船体が折損し大量の燃料油が流出し、沿岸国の生態系に被害を及ぼした事故はまだ皆様の記憶に新しいものと思います。
 原因は携帯電話の通話圏に入るべく航路を変更し沿岸に接近して航行しようとしたが、至近距離に接近するには不十分なECDIS のデーターを使用していたためとされています。
 電子チャートにGPS による船位が表示されるECDIS が主流となり、従来の紙チャートの概念が薄れ、適切な尺度の海図が使用されているかの確認や、実際の物標やレーダーによる船位の測定が疎かになりがちな実態が露見された事故と言えるでしょう。
 昨年3 月には日本の船会社が所有する全長400メートル幅60メートルの大型コンテナ船が砂嵐と強風に煽られスエズ運河で座礁、約1 週間スエズ運河を塞ぎ世界のサプライチェーンを混乱させることとなりました。
 スエズ運河庁は、船長の操船ミス及び速力超過を原因として挙げ、船主側は水先人が嚮導していた点を指摘し対立があったようですが、合意文書の内容は明らかにされていません。
 当時の本船のAIS-DATA の分析によると、水深25メートル幅150メートルの航路を制限速度を超える約13ノットで航行、蛇行を繰り返しながら、座礁に至ったとの報告も紹介されています。
 狭い運河を超大型船が強風下で針路を保つため高速で航行したことで、Shallow Water Effect、Bank Effect が多分に作用したことが推察されます。
 時代のニーズに合わせた技術革新により、輸送量の拡大や自律運航船等にみられるハード面の飛躍的進歩がみられますが、前述したような事故を未然に防止し船舶の安全運航を確保するためには、船舶運航実務者としての経験と知識に基づいた基礎的な要素をしっかりと見つめ、原点に立ち返り技術革新に対応していくべきではないかと考えます。
 当協会は、海上勤務、陸上での船舶運航関係部門で活躍される会員の皆様に有益な情報を提供すると共に、将来の海運界を担う海技人材育成にも寄与すべく、引き続き精力的に活動を続けて参ります。

 当協会の運営を5 年前にお引き受けして以来、会員の皆様が身近に感じる船長協会を念頭に事業を進めて参りましたが、コロナ禍の中で人流が制限され、協会の催しで会員相互が交流する機会が激減したことは残念なことでした。
 今年は新型コロナ感染拡大の終息が期待され、海運界においてもカーボンニュートラルや自律運航船等に見られるDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが益々進捗してゆくことと思います。
 航海士会員、正会員の出身基盤も多様化しており、Versatile かつResourceful な海技者の活躍が期待されています。ポスト・コロナ時代に向け当協会も変革を求められており、若い次世代の皆様の参画を必要としています。
 2023年には国際船長協会連盟(IFSMA)の総会を東京で開催することが決定されており、当協会のプレゼンスを高め、更なる飛躍へのチャンスと考えております。
 是非とも会員各位の活力で当協会を盛り立てて頂きたいと存じます。

最後に、会員の皆様にとって今年は明るく平穏な年となる事を祈念し、新年のご挨拶とさせて頂きます。

 


LastUpDate: 2022-May-24