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2023年の年頭にあたり、謹んで初春のご挨拶を申し上げます。
昨年は、3 年目に入った新型コロナウィルスの感染対策としてワクチン接種が広く行われたにも拘わらず、年末から第8 波の拡大時期に入り終息に向けては先の見えない状況が続いています。感染対策と経済活動との両立を目指して少しずつ以前の状況に戻りつつありますが、船舶運航の現場では、上陸制限、各国の検疫及び出入国管理において、未だ一部の地域においては以前と同じ状況に戻ったとは言い難い状況のようです。
昨年の2 月に始まったロシアによるウクライナ侵攻も停戦協議の可能性を見いだせないまま2023年に入っています。協会の月報“Captain”の「IFSMA(国際船長協会連盟)便り」において、赤塚理事がNo.81, No.83で報告していますが、世界有数の船舶乗組員供給国であり、黒海にオデッサやイリチェスク等の重要港湾を擁するウクライナが紛争状況下に置かれたことは、世界の海事社会に大きな打撃を与えています。
ウクライナへの侵攻が始まって直ぐにロンドンにおいてICS(国際海運会議所)の主導の下、海運関係団体が集まりUkraine TaskForce Group が結成され、IFSMA も同グループの会合に参加しています。IFSMA 経由で日本船長協会にも隔週で開かれている会議の情報が伝えられています。日本の一般のマスコミではあまり報道されていませんが、昨年の9 月の段階で750人を超える船舶乗組員が紛争地域に留まらざるを得ない状況であるとの報告がなされています。黒海では滞船も多くなっており、乗組員らは未だ交代ができない状況が生じています。ウクライナ人、ロシア人乗組員らにはビザの問題、徴兵の問題も多く発生しています。幸い、日本人乗組員が紛争地域に留まっていると云う事例はないようですが、日本の海運会社の運航船舶が黒海に配船されている状況はあり、滞船問題、乗組員の交代の難しさの問題は無関係ではありません。
また、ウクライナでの問題のみならず、昨年12月に開催されたIMO の第128回理事会では北朝鮮の周知なく発射されたミサイルに対する非難の声明も出されていますが、IFSMAの代表は、IMO では、船員の安全と福祉の重要性について公に声明を出すことに留まっているもどかしさについて次のように発言し ています。We all seem to speak publicly about the importance of the Safety and Welfare of our seafarers, but when it comes down to it, words are one thing and actions are totally another. 声明は出すけれど、具体的に動いていない(動けていない)と云うもどかしさです。我々としては、現場の乗組員らの安全のために、地道にできる限り努力していくことを考えていかなければならないと感じています。
このような社会情勢の下、今年の10月には、IFSMA からの要請を受けて東京でIFSMAの総会・シンポジウムを開催します。わが国の海運会社等の支援を頂きながら、初めてのアジアでの開催となります。本来ウクライナで開催と云う計画もあった様ですが、2023年は東京と云うことになりました。
シンポジウムでは多くのテーマで講演・討議が予定されていますが、日本船長協会としては、I F SMA 本部とも協議の上、単なるIFSMA 内部のシンポジウムに終わらせることなく、広く世界の海事関係者が注目するテーマを選び我々を取り巻く諸問題についてアピールしていこうと協議しています。今、日本船長協会が取り組んでいるテーマの一つは近い将来一部で実用化がなされるであろう自動運航船の主要機能である避航システムの具体的な認証基準の提案です。
当協会では、昨年の3 月から、日本海事協会からの委託を受け、自動避航システムの認証(基準策定)を目的とした客観的な評価基準の策定に取り組んでいます。昨年の10月からは、操船シミュレータを有している日本の海運会社三社の全面的な協力、支援を頂いて検証実験を行っていますので、今年度段階での結果が待たれるところです。
近い将来、世界中の色々な計器メーカが製品化するであろう自動避航システムは基本的にブラックボックスです。当協会が提案する同システムの基準は、周りの船舶に不安を与えないと云うことをキーワードとして、COLREG(海上衝突予防法)適用海域において、前広にリスク軽減を行うことを前提にしています。
この提案については、会員の皆様と共に機会を設けて議論を重ねていきたいと考えています。
今年の国内外の社会情勢は、まだまだ霧中状態のところがありますが、東京でのIFSMAの総会・シンポジウム開催を機会にわが国海運のプレゼンンスを高め、海事社会に貢献していきたいと考えております。最後になりましたが、今年が会員の皆様にとって明るく平穏な年となる事を祈念し、新年の挨拶とさせて戴きます。
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