第409回 東海大学海洋学部静岡キャンパス

株式会社商船三井 船長 藤原 千尋

 

1 .はじめに

 自宅に届く月報Captain の「船長、母校へ帰る」の記事をいつも楽しみに拝読していますが、まさか小職自身が依頼をいただき講義を実施することになるとは思ってもみませんでしたし、果たして自身に務まるかどうか、分不相応ではないかとの不安もありました。
 しかし、東海大学そして会社の大先輩であり且つ昨年度の同じ講義をご担当された五社督康船長、本件ご担当の滝浦文隆日本船長協会常務理事、そして木村友紀日本船主協会課長代理といった旧知の方々からの激励と心強いサポートもいただけ、お引き受けすることとしました。

2 .開催日時

 ようやく暑さも収まりつつあった2025年10月8 日、その日の最後の講義枠である15時10分から16時50分に実施しました。
 講義は16時50分に一旦終わったものの、その後も学生からの熱心な質問等もあり質疑応答を続けた結果、最終的には19時を過ぎることとなりました。

3 .学校紹介

 東海大学は日本全国に7 つのキャンパス、23の学部がある総合大学です。このうち、船舶職員養成施設として国土交通大臣の登録を受けている「海洋学部海洋理工学科航海学専攻」(以下、「航海学専攻」という。)が、静岡市清水区の静岡キャンパスにあります。
 静岡キャンパスは、景勝地であり世界遺産の構成資産でもある三保の松原の至近にあって駿河湾に面しており、富士山を望むこともできる風光明媚な場所にあります。また、同大学が所有し運航する海洋調査実習船「望星丸」(総トン数2,174トン)で海洋観測及び調査の実習や、海外研修航海も実施されます。
 航海学専攻の学生は、海技関連科目と乗船実習課程も含めた望星丸での通算1 年間の乗船実習を履修することにより、卒業後には三級海技士(航海)の筆記試験が免除されるとともに口述試験の受験資格を得ることができます。

4 .講義概要

 航海学専攻では、海運や船舶に係るさまざまな分野について広く知識を得て今後の学習の土台を作ることを目的として、秋学期に全14回のオムニバス形式で、主に2 年生を対象とした「船舶運航概論」という講義が開講されています。それぞれの講義テーマに沿って海運業界で実際に業務に従事する外部講師が講義を実施するものです。今回小職はその内の1 回、「航海士の仕事」というテーマの講義を担当することになり、これにあわせて日本船長協会主催の「船長、母校へ帰る」も実施され、その趣旨も踏まえて講義を実施しました。
 講義では小職のこれまでの経験等を詳しく且つわかりやすく、そしてより職場や船上の雰囲気を掴みやすい資料をもって紹介及び説明しました。また船上での生活や休暇中の生活、さらに陸上勤務の内容等も含めて仔細に説明することで、「航海士の仕事」についての知識をより具体的に把握してもらうことを目指しました。それに併せて、学生の現状の生の疑問や不安の声を聞いて、それにすべて答えることとしました。

5 .講義を実施して

 まだ本格的に乗船実習や就職活動が始まっていない2 年生を主対象とした講義であったため、自身が2 年生のときには何が知りたかっただろうか、どのような疑問があっただろうかと都度思い出しながら今回の講義の準備を進めました。その中で講義の方向性については、「将来航海士として仕事をすることに対して、学生が現状抱いているイメージを把握した上で、学生の疑問や不安を払しょくすることに寄与する。」と決めました。
 これは、航海士の職務や業態については、これまでの講義等から大まかには想像できているはずであるし、一定の特殊性をもつ仕事であることは認識しているはずです。まずはその大まかなイメージを具体化してもらおうと思いました。
 そしてその上で、航海士の仕事のやりがいや魅力についてはさまざまなところで紹介されているため比較的容易に知ることができる一方で、学生が不安や懸念に思うことについては、それらを払しょくできる(又は払しょくといわないまでも軽減できる)だけの情報が世の中にすべて十分に出揃っているわけではなく、なかなか聞く機会もない、誰に聞いたらよいのかわからない、つまり自身でなかなか解消できない現状があるか、と考えたことによるものです。その不安や懸念が解消されないことで、将来航海士になることを躊躇又は断念する原因となってほしくない、航海士になったとしてもその後にミスマッチを起こしてほしくない、そしてさらには海や船に対する全体的なネガティヴイメージへと昇華してほしくない、という願いがありました。
 そこで事前課題の一つに、「自身が航海士という仕事に就くにあたって不明な点や不安なことはあるか。航海士になることに躊躇している・心配している・迷っているのであれば、その理由や原因を列挙する。」というものを出し、そこに「正直に、遠慮なく、ありのままに回答するように。」という条件も付しました。
 その結果、非常に数多くの、また体系化できないほどの多様な回答が寄せられました。そのすべてが「やっぱりそうだよね。」と共感できる疑問や不安ばかりでした。今となっては「それは心配に及ばないよ。なぜなら…」、「それについては、このようにすれば解決できるよ。」などと経験から解決手法をアドバイスすることができるようになったものの、小職自身も大学2 年生のときに抱いていたものとそう大きく変わりませんでした。
 「正直に、遠慮なく、ありのままに」と事前課題を出した以上、その疑問や不安に対して、こちらもできる限りの「正直に、ありのまま」で回答するとともに、細かく説明しました。そうしたことで、これまで見えていなかったこと、わからなかったことがよりはっきりと見えてきて、将来に対する疑問や懸念、不安の払しょくをしてもらうことができ、「航海士を目指す。」という意欲の増進に寄与することができたのではないかと考えます。
 説明からその後の質疑応答まで長時間にわたったにもかかわらず、そのすべてを出席した学生全員が目を輝かせながら非常に興味深く聴いてくれました。そしてさらなる質問もどんどん寄せられ、その熱意はとても大きなものだったと感じています。これをきっかけのひとつとして、将来海運・海事業界で大いに活躍してくれることになれば、嬉しい限りです。

6 .おわりに

 「航海士の仕事」についてはもちろんのこと、これから先の勉学や実習や就職活動、学生生活についても、かつて自身が同じ環境に身を置き、同じ東海大学生であったときのことも踏まえ、今回講義を行い質疑の応答もできたことが、「船長、母校へ帰る」ならではの趣旨を達成し、その目的を実現することができたと考える次第です。
 最後になりましたが、今回のこの非常に貴重な機会をいただき、日本船長協会の皆さまにこの場を借りて御礼申し上げます。まことにありがとうございました。

感想文

生徒達の作文/

 


LastUpDate: 2026-Feb-27