オンライン総会
(一社)日本船長協会 理事 赤塚 宏一
はじめに
第46回となるIFSMAの隔年時総会は10月14日・15日の二日にわたり、オンライン(Zoomミーティング)で行なわれた。もちろんIFSMAとしては始めてのことである。初日は総会議事として活動報告、会計報告、次回総会の確認などの議事が行なわれた。日本船長協会からは葛西会長、中村副会長、増田顧問そして筆者が参加した。全体の出席者は24ヶ国、22船長協会からなり、およそ40名である。二日目はIFSMA会員などによるプレゼンテーションであった。
船員の需給バランス
第一日目は総会議事に当てられたが、議事そのものはごく短時間で終わり、殆どの時間は会長挨拶と事務局長報告で終わった。
これは過去2 年のコロナ禍の下のIFSMAの活動を会長・事務局長の立場から振り返ったもので、IFSMA便りとしては極めて重要なものと考えるので少々長くなるが書いて見たい。
ハンス・サンデ会長による歓迎の挨拶
北欧訛りの強い英語で長広舌を振るい、毎回聞き取るのに苦労するが、順を追って報告したい。
会長はまず参加者に感謝するとともに、前回2019年の第45回総会を極めて限られた準備期間で開催し、歓迎してくれたフィンランド船長協会に改めて謝辞を述べた。そして、彼自身現役の船長として、またノルウェーの船舶職員組合の長として、コロナ禍が如何に船員とその家族を苦しめたか身にしみて感じている、またそのために船長が如何に重い責任を負っているか痛感したと述べた。
「船長は国際法上、極めてユニークでかつ強い権限を持っている、しかしこのパンデミックを通して現実の厳しさを痛感した。船長は多くの国の当局者の無理解と誤った管理・失政によりひどい失望と無力感を味わった。海事産業に従事する船主・組合・船舶管理者そして国連事務局はもとよりその関連国際諸機関、いうまでもなくI M O・I L OやWHOの努力にも拘わらず私達船員の置かれた立場は極めて弱いものである。」と述べた。
そしてI F SMAの事務局長と次長がこの18ヶ月如何に重要な働きをしたかを述べ、感謝した。
欧州ではこのパンデミックに関し、IFSMAの会長や事務局長が公的な委員会や会合に呼ばれ意見を述べる機会が多くなったようである。
船員関係の公的機関や民間団体は数多くあり、それぞれの分野で活動しているが、今回のようなパンデミックに際し、海事関係の総力を挙げて取り組まねばならない時には強いリーダーシップを発揮出来る者が必要である。その中にあってICS(国際海運会議所)とITF(国際運輸労連)は緊密に連携し積極的に活動していた。IFSMAはこの両団体と常に連絡を取り活動に参加してきた。この経験から船主・組合・そして船長を代表するIFSMAの三者連合体はパンデミックのような危機に際してはもっとも強力な力と影響力を持つと確信していると述べた。
IFSMAについては1974年に結成され、翌年の1975年には直ちにIMOの諮問機関と認められ、ILOにおいても同様の地位を占めている事実、またIFSMAは政治的に全く偏向のない中立な機関で、そして船主や政府からは何の干渉も受けず、ただ海上の安全と海洋環境の保護、そして船長・船員の人権を擁護する組織であると強調した。
IFSMAの会員関係については、残念ながらブルガリア船長協会が財政難のために脱退し、同協会の会長一人が個人会員として残ったこと、一方2019年にはルーマニア船長協会が、2020年には米国の船長・航海士・パイロット国際協会が参加したことは極めて心強いと述べ、またウクライナ船長協会の会長であるCapt. Grigoryukuが同国の海上交通労連の会長に就任したことを祝し、そして本年亡くなった米国代表の副会長であったC a p t .Hunziker に弔意を表した。
さらに会長は続けて、「皆さんは、ルーマニア人船長の非常に悲惨な運命を知っているだろう。Capt. Dan Sanduは今年の4 月19日、MV Vantage Waveに乗船中、 インド沖で心臓発作により亡くなった。そして非常に遺憾なことには14ヶ国以上の国が、馬鹿げたCOVID規制により、悲嘆にくれる彼の家族への遺体の送還を拒否したのである。半年にも渉る関係者や諸々の機関、とりわけICSとITFがILO・IMOを通して関係国に圧力を掛けた結果、最終的にアラブ首長国連邦経由で遺体は故国に送還された。そして2 週間前に葬儀が行なわれ故国に埋葬された。その間IFSMAはCapt. Sanduの家族に深い哀悼の意を表すとともに定期的に連絡を取り、家族に情報を伝えた。遺体の送還など当然果たすべき人道的助力を拒否した政府によって、Capt. Sandu やその乗組員、そして家族が受けたひどい仕打ちに対して私達は何と慰めたら良いのであろうか。私達、そして海事社会は、この非人間的な行為を決して忘れてはならない。」
そして、会長はCapt. Hunziker, Capt.Sandu 及びこのパンデミックで命を落とした全ての船員のために黙祷を呼びかけ、そして第46回総会の開会を宣言した。
事務局長による報告
事務局長であるCommodore Jim Scorer の英語はいわゆるQueens English で非常に力強くメリハリがきいていて聞き取りやすい。
会長挨拶と重複しないようにIFSMAの活動を報告する。
「2 年にわたるパンデミックのため、船員の交代、超長期乗船、そして船員の感染症対策やメンタル・ヘルスの問題などが顕在化し、IFSMAも多くの国際機関や民間団体と接触することが大幅に増えた。これらの諸団体は概ね船長や船員に対して好意的であるが、多くの国は地方当局が官僚的な体制や煩雑なパンデミック規制により折衝に困難を来すことが多かった。パンデミックで対面形式の会議は少なくなったが、オンライン会議は飛躍的に増加した。IMOの会議も今や全てオンラインだが、時差の関係で日中の3 時間、すなわち11:00〜14:00しか会議は行えず、多くの議題は積み残し、あるいは文書による審議となり、業務は山のように増えた。こうしたなかで、ボランティアとして常にIFSMAを支えてくれる海事弁護士のAlan Higgs を始めとする諸氏には感謝に堪えない。」
「IFSMAの本部事務所をITFの建物の中に移転したことは既に報告したが、家賃が半額になったほか数々のメリットがある。IFSMA規約では本部をロンドンに置くとあるが、ロンドンにあるメリットはIMOへのアクセスは言うに及ばず、他団体との連絡が容易となるなど計り知れない。
IMOでは多くの重要な事柄が審議されているが、IFSMAにとって特に重要と思われるのを挙げてみたい。
第一に、STCW条約改正に関する継続的な議論がある。関係者の多くは、STCW条約は時代遅れであり、全面的な改正が必要だと主張している。これには多くの時間と労力がかかるが、多くの関係者はそれだけの価値があると主張している。一部では、部分的な改正・修正で何とかなると主張しているが、IMOは何年もSTCW条約の小改正を重ねているが、小手先の改正では目的に適さなくなってきている。審議は来年にかけて活発化するが、経過報告はしっかりとやる。
STCW条約全面改正にあたっては、各国の船長協会から専門家を募るつもりでいる。それは、IFSMAの戦略プランの最初のキーポイントである『事務局や役員が実践的な知識や能力を欠いているところを会員から学ばなければならない』と強調されているし、実際そうした知識こそIFSMAのメリットである。IFSMAはIMOでのSTCW条約改正に影響を与え、船長が乗組員の訓練や指導に対する責任を果たせるように支援しなければならな
い。」
ストなどの制度が導入された。その際には条約は技術の進歩や社会情勢の変化に応じて、少なくとも10年に一度は大幅な見直しが必要であるというコンセンサスがあった。2010年にはマニラ改正があり、休息・労働時間の見直しなどが行なわれた。それからはや10年余、自動運航船も就航し始めている現時点でSTCW条約の本格的な見直しは絶対必要であろう。
「船長の犯罪者扱いはますます深刻となってきたが、これは船長の究極的な責任と関連するものだ。ここ数年、船長が明確な犯罪容疑をかけられる前に拘留され基本的な人権さえほとんど考慮されていないケースを数多く見てきた。IFSMAは、この問題を関係国やIMOの関連会議で提起し続ける。
特に、今年3 月にスエズ運河で座礁したEver Given号の船長と乗組員は、法外な金銭補償獲得のための人質となって長期間エジプト当局に拘留された。これは全く容認できない行為であり IMO、ILOの関連条約および国際法に完全に違反している。この問題が来年のIMO海上安全委員会及び理事会で取り上げられ議論されることを期待している。」
その後、事務局長は船員の疲労の問題及び労働時間記録簿についても報告したが、これは月報第460号(2020年12月・2021年1 月号)で報告したこともあり、また総会二日目にWMU(世界海事大学)からプレゼンされたこともあり割愛する。
「次は自動運航船の問題である。IFSMAは、様々な程度の自律性を持つ船舶の船上および陸上での船長の役割についての議論において中心的な存在である。IMOでは『自動運航船利用のための規則の論点整理Regulatory Scoping Exercise (RSE)』が殆どの小委員会・委員会で終了しており、今やIMOとしてこれらの審議結果をどう扱うか議論される。この問題に深い関心を払う国々は自動運航船に関する新しい包括的な条約が必要ではないかと考えている。
IFSMAは2019年に『海上と陸上における船長の役割に見られるギャップ』との論文を発表し、問題点を明らかにすると共にIFSMAの見解を表明した。すなわち自動運航船に関わる事項は全て衝突予防法などと同じくIMOで扱われるべきで、それは全ての船舶、全ての海域、全ての航海について適用されるべきというものである。そして自動運航船に関してはIMOの他の委員会と同様の権限を持つJoint Committee Working Group(合同作業部会)を設置することを提案した。IFSMA の論文はRSE に関して発表された論文の中でも高く評価されていることを知らせたい。これは今後の審議において重要な役割を果たすと確信している。」
IFSMAの広報活動に関連して、会長が触れたルーマニア人船長の遺体送還問題については、ICSと協働して国際的なマスメディアに取り上げてもらうべく、努力して居るところだと語った。(注 本件については2021年11月19日付の “The Wall Street Journal” に“The Ship’ s Captain Died at Sea. Six Months Later, His Body Was Still in the Freezer” 「船長が航海中に亡くなった。半年後、彼の遺体はまだ冷凍庫の中にあった」として大々的に取り上げられた。この件に関しては別途報告する機会もあるかと思う。)
会計報告
2020年は収入£117,778( 約18,800,000円)で支出は£91,491(約14,600,000円)で、差額は約420万円となる。これはコロナ禍で殆どの会議がオンラインとなり、会議費・交通費が大幅に減少したことによる。2021年の決算、そして2022年の予算案もほぼこれと同水準である。
規約改正
これは2019年の総会で役員選挙に際し、デンマークから船長協会代表と個人会員の2 名が立候補し、いずれも当選したため、理事会入りを強く望んでいたトルコ船長協会会長が落選した。これをうけ、理事会構成メンバーは広く世界各国の代表であるべきとして、一カ国から理事は1 名に限るとする改正案である。また任期途中で死亡したり、あるいは理事の任に堪えられなくなった時、その出身協会はその後任を指名し理事会で承認するという手続きである。いずれも原案通り可決された。
次期総会
2023年の第47回総会は日本船長協会の招待により東京にて、2025年の第48回総会はウクライナのオデッサ、2027年第49回総会はフェロー諸島となった。
葛西会長は2023年総会開催にあたり、IFSMAメンバーの支持を感謝し、東京で開催出来ることを名誉に思うと述べ、今は我々全てがコロナ禍で厳しい試練を受けているが2 年後には通常の生活に戻り、有意義な総会となることを信じていると結んだ。そして日本船長協会の国際及びIFSMA問題担当の中村副会長を紹介した。中村副会長はIFSMA担当として、出来る限りの準備をし、総会が実り多いものとなるよう努力すると挨拶した。
ご両人のスピーチは出席者から暖かく迎えられた。
第二日 プレゼンテーション
二日目の最初のプログラムはICS(国際海運会議所)の事務局長Guy Patten とITF(国際運輸労連)の書記長 Steve Cotton による“Past, Present and Future of Covid-19” でそれぞれの立場からの過去18ヶ月の活動報告であり、その後、IFSMA 事務局長 Jim Scorerを交えた質疑応答であった。
ICSはもっとも有力な国際的船主団体だが、I T Fと労働協約を交渉する立場ではない。
従って両者が対決するようなことは少なく関係は良好だが、今回のパンデミックにあっては特に両団体が連携して、各国当局や国際機関に働き掛ける場面が多くみられたようで船長・船員にとっては喜ばしいことである。
ICSとITFは共に極めてオープンでまた率直に活動や船員社会の将来を語り興味深かった。
質疑にはいり、トルコ船長協会のC a p t .B.Bayrakdar がトルコ船社管理のバルカーDensa Eagle 号は2020年9 月にロシアから九州に寄港し、多くの船員は雇用契約満了のために帰国したいがコロナ予防により、検疫所が下船を認めないという事態になったが、全日本海員組合の大堀二三男ITFコーディネーターを主とするチームが粘り強く当局と折衝し、結果的に九州から横浜のホテルまでバスで移動し何とか羽田から帰国できた。これもみなITF及び日本のコーディネーターのお陰である、と述べた。これに対しCotton書記長は組合として当然のことをしたまでで、日本の友人もそのように思っているだろうと答えた。
さて、今次総会には4 本のプレゼンテーションがあった。ペーパー1 は “Seafarers’Wellbeing or Business, a Complex Paradox of the Industry.”
(船員のウェルビーイングかビジネスか、海運産業の複雑なパラドックス) でIFSMAの個人会員でもある世界海事大学のBadri TETEMADZEによってプレゼンされたもの。またペーパー4 は “A Culture of Adjustment, what’ s next? ”(調整の文化、そして次は?)でこれも世界海事大学の Prof.Capt. Raphael Baumler と Capt. Bikram Bhati による。ペーパー1 については、これまで月報で何度か触れた内容であるし、またペーパー4 については月報460号(2020年12月・2021年1 月号)にて「船員労働時間の過小申告に関する調査報告書」として書いたものであり、今回は省略する。
ペーパー2 は “COLREGs and Autonomous Vessels:Legal and Ethical Concerns under Canadian Law. 「衝突予防法と自動運航船 カナダの法制と倫理に基づく懸念」Presented” by Marel KATSIVELA, CMMC (Canada)で、自動運航船と衝突予防法の関係をカナダの法制をベースに論じたもので、倫理の面からのアプローチは興味が深かったが、本件については筆者には十分な知識も思想も持ち合わせていないので、後日ゆっくり咀嚼してみたいと思っている。なお、著者は女性で法学の博士号を持ち、現在オタワ大学の准教授ある。
海事法も専門の一つで近年は自動運航船の法制に取り組んでいる。
近々“Autonomous vessel, regulatory and ethical concerns” が出版されるそうだ。このプレゼンにつき日本の名前も一寸でたので、筆者は質疑応答にさいし、日本では自動運航船について産官学で連携のもと鋭意研究が行なわれており、衝突予防法と実際の回避行動などについても考究されている、2023年の総会では日本の最前線の研究結果を報告出来るのではないかとコメントした。
海事社会における女性
ペーパー3 は“Recruitment, Retention,and Advancement of Women on Ships & Ashore.” 「海上および陸上での女性の採用、定着、昇格」と題して 米国コーストガードのCmdr Camilla B. Bosanquest (Rtd) 及び米国船長協会の Capt. Alexandra Hagertyによって共同でプレゼンされた。お二人とも立派な経歴で詳細に記されているのでここに紹介したい。
Cmdr Camilla B. Bosanquest( Rtd)、米国沿岸警備隊の退役中佐であり、9 年間の海事経験を持つ元カッターマン(小型艦船要員?)である。巡視船の指揮、海上戦術法執行チームの指揮、米国務省の政治アドバイザーおよび国連安全保障理事会の交渉担当、政治哲学および外交政策について教鞭をとり、ニューイングランド全域の沿岸警備隊の小型艦船団の運用準備を監督した経験を持つ。現在、ジョージ・メイソン大学シャー・スクール・オブ・ポリシー・アンド・ガバメントの公共政策博士課程の3 年生で、ボストン・カレッジで哲学の修士号を、米国沿岸警備隊アカデミーで行政学の学士号を取得している。
Capt. Alexandra Hagertyは商船船長であり、軍事輸送船の船長を務めている。20年近くの海上勤務履歴をもち、Nautical InstituteのYounger Members Councilの創設メンバー、米国船長協会の国際関係担当副会長、IFSMAの副会長就任も予定されている。(注 規約改正が承認されたため総会終了後、米国船長協会は直ちにCapt. Hagerty を米国選出のIFSMA副会長に選任したいとの提案があり、オンライン理事会で承認された。IFSMAの10人の副会長のうちフランスのC a p t .Quaini と並んで二人目の女性副会長である。)
SUNY Maritime Collegeで国際輸送管理の修士号を、デンマークのオーフス大学で認知記号論の修士号を取得しており、5 カ国語に精通している。
ペーパーの要旨は次の通りである。
「海事産業では、十分な訓練を受け高度な、企業の利益だけでなく、地域、国、および地方の経済にとっても重要だ。
そのためには、有能で勤勉な船員の存在が不可欠であり、そのような船員には有利な条件での雇用を提供されるであろう。つまり、男性も女性も海事産業で働くことは有望だということである。それにもかかわらず、船長、航海士、機関士の数は不足している。現在、そして将来にわたって安全で効率的な海上輸送を確保するために必要な人材を養成するには、女性に投資しなければならない。現在、海事労働者全体に占める女性の割合はわずかだが、女性は企業や産業だけでなく、経済や家庭の将来の繁栄の鍵を握っている。しかし、海事産業に女性が全面的に参加するためには、現在海事社会で権力と影響力を持つ立場にある人々が一丸となって努力する必要がある。
他の職業でも成功しているように、海事産業でも、政府、学界、組合、経営陣などで指導的立場や幹部として活躍出来る女性を積極的に登用し、海上と陸上の両方で女性の採用、定着、昇格を促進するための施策を実施し、時代遅れの差別的な考え方を排除しなければならない。」
そして、米国においても海事社会への女性の進出は少なく、船員については商船系教育機関の卒業生に女性の占める割合は12〜13%程度であり、また女性の米国一級海技士の資格保有者は149名でこれは全一級海技士の資格保有者18,804人の内のわずか0.79%だそうだ。日本における女性の一級海技士の資格保有者についての資料は持ち合わせていないが、多くても数十人であろう。日本では2017年に「女性船員の活躍促進に向けた女性の視点による検討会」(座長:河野 真理子 早稲田大学法学学術院教授)が設置された。近い将来の自動運航船の時代を見据えると今後日本においても女性の活躍する場面はふえるのではないだろうか。
このプレゼンは二人の女性によって交互にスライドの説明などが行なわれ、迫力があった。
スライドには採用や雇用維持などに関する
具体的なステップを示すものがあり、これは
恐らく多くの人事に関するセミナーなどで使
われるものであろうが、参考までに挙げてお
きたい。
採用 “Recruitment” に当たり、Welcome →Show →Share →Involve →Respect とあり、また、定着“Retention” にあってはEncourage→Include →Listen →Co-create →Respectとある。そして 昇格“Advancement” においてはInvest →Mentor & sponsor →Ask & listen →Place & promote →Respect とある。
どの過程においても最後は必ずRespect である。Respectを辞書で引くと先ず尊敬・敬意とあり、ついで尊重・重視とある。これはその人の仕事に対してまず敬意を表し、そして正当に評価することが良い雇用関係を維持し、その人の能力を最大限に引き出し成長させ、ひいてはその組織を活性化し発展させるのであろう。
終わりに
コロナ禍のため、IFSMAはこれまで2 年ほどオンラインで理事会を開催してきたが、オンライン総会は初めてである。規約改正など投票を要する議題については、正当な投票権行使者の特定やIFSMAの場合、各国協会の投票権は会員数によって異なるところから、慎重に準備が行なわれた。幸いITテクニシャンの協力も得て今回の総会は議事、プレゼンともスムースに行ったと思われる。
しかし、IFSMAのような国際組織とは言え小さな団体では、理事会・総会以外に委員会などはなく、意見を表明しあるいは交流を行なう機会がないところから、総会は会員交流の重要な機会を提供してきた。特に副会長を送り込んでいない船長協会では、情報交換の貴重な場でもある。やはりオンライン総会では限界がある。
2023年総会は東京で開催と決まったが、4年振りの対面形式の総会となるところから、盛会が期待される。また東京総会では役員の改選も行なわれ、何人かの役員の交代も予定されているところから、参加者にとっては記念すべき総会となるであろう。
東京総会を引き受けて下さった日本船長協会の役員及び事務局の方々には、ご苦労をお掛けすることになろうが、充実した総会として参加者の記憶に残り、またこれを機に各国船長・航海士の団結・連携がより一層密接なものとなり、国際的な船員社会のさらなる発展となるよう願っている。また東京総会には韓国船長協会にも出席してもらって、IFSMAに加盟するよう呼びかけたいと思う。
IFSMA総会を日本で開催するのは第三代IFSMA 会長(1994年〜1998年)を務められた故川島裕船長の悲願であったが、こうして2023年に開催されることが決まったことで川島船長も泉下で喜んでおられるであろう。
参考文献
1 .“Seafarer Workforce Report” 〜The global supply and demand for seafarers in 2021〜
2 .IFSMA Newsletter 46 November 2021
3 .“Wall Street Journal” Nov.19 2021
4 .gCaptain 11月13日号