IFSMA便りNO.3

(社)日本船長協会事務局

IFSMAの中期展望

前号のIFSMA便り(2)の最後において少々ふれたが、昨年11月に行われたIFSMAの理事会において、事務局長のマクドナルド船長からIFSMAの中期展望について問題が提起された。
これは昨年5月の総会のおり、次の理事会ではこの問題についてゆっくり話し合おうと言っていたことであるが、11月の理事会では海賊対策等急を要する議題が多く、時間がなくなり問題提起のみとなった。
そして各国の加盟協会の意見を聞いたうえで次回3月の理事会において討議することとなったものである。
こうした理事会での合意に基づき12月4日に次ページに掲載する書簡が事務局長から各国船長協会に送られてきた。
これは事務局が直接関わる問題のみを扱ったものであり、IFSMAとしての展望は、これらの問題を踏まえてさらに検討されるべきものである。
今回のIFSMA便り(3)においては、この書簡をベースに提起された問題点の背景や小職個人(赤塚)の考え方などを披瀝し、出来るだけ会員諸兄のコメントを求め、日本船長協会としてIFSMAの活動に対する今後の方向性を形成したいと思っている。
どのような団体であれ組織であれ、常にしっかりした展望と長期的な計画や戦略を持たねばならないが、とりわけIFSMAのような実際の活動がごく少数の事務局員と役員によって実施され、メンバーの関与する機会が少ない団体は、一部の役員と職員による恣意的な活動が行われないとも限らない。
そしてそれらの関係者がその組織に長期的に居座ると組織は硬直化しマンネリとなりやすく、属人的な色彩が濃くなり、これは組織にとって決して好ましいことではない。
IFSMAについて云えば、こうした問題点が事務局長から提起されたことは、このような危険性を理解した上でのことであり、その意味では現在の組織に透明性も柔軟性もあることの証しではある。
さて、IFSMAの会長であるリンドヴァル船長は来年2010年で2期8年を務めることになる。
昨年の総会の時点では今期限りで引退したいと言っていたが、その後出身母体であるスウェーデン船長協会が引続き会長としての活動に必要な費用を負担するのであと1期4年務めるよう要請したとのことで、他のスカンディナビア諸国の協会もこれを支持したという。
リンドヴァル船長が立候補すれば、対抗馬は無いに等しいので、当選は間違いなく彼が更に4年間IFSMAを率いていくことになる。
リンドヴァル船長については、本誌383号(平成20年2月3月号)にて詳しく紹介したが、しっかりしたヴィジョンと強いリーダーシップを持っているが、決して独走したり、恣意的に物事を運ぶような人物ではないので、さらに4年間彼に操舵を委ねることになんら問題ないと思う。
NO.2である会長代理については、赤塚は続投する積りは全くないが、7人の副会長の一人は是非日本から出したいと思う。
役員でいることは情報量において格段に違い、またIFSMA活動方針に対する影響力も大きな差がある。副会長の義務は年1回の総会と年2回の理事会に出席することであるが、その労力と費用を補って余りあると思われる。
是非日本から副会長候補者を出すことに日本船長協会会員のご支持を得たい。
一方、事務局員の構成であるが、これまでも述べたように事務局長はロジャー・マクドナルド船長、事務局次長はポール・オーエン船長、そして事務員のロベルタ・ホーレットであり、三人とも非常勤職員である。
マクドナルド船長の書簡の第1、2項は事務局の構成に関するものであるが、この照会の背景は彼自身が2001年8月に事務局長に選任され、早7年半あまり、前任のクリップシャム船長の任期を越え、彼自身も67歳となった事もある。
彼の任期中に会員数も大幅に増え、IMOでの貢献度も増し、また不当拘留された船長の釈放などについての実績も積みあがり、今後の発展への見通しが立てやすくなった時点に至った事である。
IFSMAの中長期の展望や戦略は新しい顔ぶれで、出来れば若い有能な人材で方向性を定めるべきとの考えである。
そして次回の役員選挙が2010年、さらに次々回の選挙は2014年である。事務局長が交代するとすれば業務の継続性確保の観点から会長と同時に交代するのは避けるべきであり、引継ぎや新会長による執行部を補佐するためにも期中の2012年が適当ではないかとの考えである。
もちろんIFSMAとしての中長期の展望は会員が論ずべきものであることは言を待たないが、ここでは事務局長としての立場から、また事務局が直接関わる問題について、その一部につき加盟協会の意見を聞きたいというものである。

さて、事務局長の書簡は下記の6項について加盟協会の意見を求めている。
1.将来の事務局はどのような構成であるべきか。
2.事務局長のポジションは選挙によるべきか。
上記のように、会員数こそ近年増えたとはいえIFSMAの財政規模は極めて小さく、その基盤は脆弱で常勤事務局員を置く余裕はない。
云うまでもなくするべきことは山積しているが、これまでのような非常勤3人体制で今後とも出来る範囲でやっていくのが現実的であると思われる。
IFSMAの事務局長はほとんどボランティアに等しく―事実昨年11月の理事会では会費未納分を埋めるために事務局長が3ヶ月分の給与を返上していた事実も明らかとなった―ロンドン在住で船長経験者、もしくは船長のみならず船員の業務と責任を良く理解しうる人材でIMOを始めとする国際海事社会にも明るく、名誉職ではなく事務局長として力仕事をしてくれる人材を見つけることはIFSMAとしても容易ではない。
こうした事務局長は総会で信任投票され役員として扱われるべきと思う。
3.事務局と各国協会及び個人メンバーとのコミュニケーションは十分と思うか。
IFSMAの執行機関は総会と理事会しかなく、会員へのコミュニケーションは主として各国協会を通して行われるのであるが、各国協会の対応はともかく、IFSMAとしてもさらに努力すべき点は有るであろう。
具体的にはホームページの充実であろうかと思う。
このホームページはそれなりに良く出来ていると思うが、速報性に欠ける憾みがあるし、また資料としてのIMO文書や他の文献などのリンクも充実すべきである。
4.IFSMAのニュース・レターは更に形式の整ったものとすべきか。
IFSMAの総会の前に発行される年報程度のグラビア印刷の会誌が欲しいと思うが、これも費用との兼ね合いで考えるべきと思う。
前項で述べたホームページの充実が先である。
5.総会は毎年行うべきか、或いは隔年に行うなど回数を減らすべきか。
総会は加盟協会や個人メンバーが交流出来る唯一の場であるので、これまでどおり年次総会とすべきである。
開催場所については本部のあるロンドンで行うとの基本は今後とも変わらないが、近年は加盟協会からの強い要請で、各国の記念行事の一環としてロンドンを離れて開催してきたが、これはこれで意義のあることと思う。
6.IFSMAのメンバーは船長に限定されるべきか。
欧州各国の協会は伝統的に船長・航海士の労組的な性格を持つものとして結成されたものが多く、また会員に機関士の加わった協会もある。
純然たる船長だけの協会は、親交団体やいわゆるクラブとしての色彩が濃く、IFSMAの目指すような活動にはかならずしも積極的ではないと思われる。
このためIFSMAの会員資格を厳密に船長に限ることはIFSMAの活力を殺ぐことになると思われる。
この書簡にもあるように、ここに挙げた問題点は網羅的ではないのは勿論だが、IFSMAとして、国際的に船長を代表する団体として、この未曾有の不確実性の時代に今後はどうあるべきかは十分に議論されなければならない。
IFSMAは海上の安全確保・海洋環境の保護のために世界的に船長が連帯するために結成されたが、今日船長の直面する問題は海上安全・海洋環境の保護を超えて、幅広い問題に取り組まねばならない。
その一つが人材の養成であろう。
単に船長の後継者を教育・訓練・養成をするのみでなく、海事・海洋社会を支える人材の養成にも貢献する必要があると思うからである。
以上の6項目に止まらず、その他IFSMAのあり方に関しても幅広く会員諸兄の声を聞かせて戴き、それを可能な限りIFSMAの運営に反映し、ひいては国際的な海事社会に影響を与えて行きたいと願っている。


LastUpDate: 2021-Jun-23