カナダ船長協会のターナー船長が表題について講演した。
e・navigation については、本協会の船長実務講座で今津先生・矢吹先生が講演して下さり、小冊子として会員諸兄には配布されているので、ここでは内容には触れない。
enavigation のeについて、今津先生も触れられているが、ターナー船長は初期にはelectronic と想定されていたが、現在は“enhanced”もしくは“encompassing”と言う方
が適切であろうと言っている。
e・navigation のIMO で承認された定義は「航行とそれに関連する業務の質を向上させることを目的とした、電子的手段を用いた、船上及び陸上からの海事情報の調和した収集、統合、交換、表示及び分析」(上述第117回船長実務講座)となっているが、ターナー船長はわかり易い定義として、IMO の定義に補足して、次のような文言を挙げている。
The harmonised collection, integration, exchange,presentation and analysis of maritim
information onboard and ashore by electronic
means to enhance berth to berth navigation and related services for safety and security at sea, and the protection of the marine environment.
ターナー船長はe・navigation の発展にともない、必然的にブリッジ内にてディスプレイなど電子機器に頼ることが多くなると思われるが、当直士官としての基本的な見張りの必要性を強調するとともに、船長・航海士に対する必要な教育・訓練の実施、そしてそもそもこうしたシステムの発展・導入にはユーザーがリーダーシップを握ることの必要性を説いている。
前述のCoastal Domain Awareness といい、Vessel Traffic Managementといい、あるいはe・navigation といい、船舶運航の環境が大きく転換する時期にさしかかっているようである。
またこれらのコンセプトの関連や、融合・統合と言った問題もあるのではないだろうか。
e・navigation はIMO の航行安全小委員会及び無線通信・遭難救助小委員会で審議されており、IFSMAはすでに幾つかのペーパーを提出している。
IFSMA の事務局次長のオーエン船長は長らくIALA(国際航路標識協会)のこの種の委員会に参加しており、e・navigationに詳しく、ユーザーとしての船長の立
場に充分配慮したペーパーの原案作成をしている。
しかし日本船長協会としてもIMO の審議に参加する日本政府に対してe・navigationに対する対処方針などについて直接コメント出来るような体制を取りたいと思う。