IFSMA便り NO.92

 STCW条約の包括的見直し

(一社)日本船長協会 理事 赤塚 宏一

 

はじめに

 昨年10月末に東京で開催されたIFSMA総会にて筆者は2002年から務めてきた副会長を辞任し、後任として本会の中村紳也会長が選任された。「IFSMA便り」も本来中村会長に引き継ぐべきところであるが、船長協会会長業務多忙をもって中村会長から筆者に引き続き執筆するよう依頼があった。今後は名誉会員としてIFSMAの情報に少々触れるほか、IFSMA役員間の情報も必要に応じて中村会長から提供されるとのことなので、今しばらく「I F S M A便り」を書き続ける事とした。しかし今後はIFSMA理事会に出席することもないので、IFSMAの状況もさることながら筆者が入手出来る情報などをベースに広く海事社会の話題などに触れてみたい。
 これはNIとしてSTCW条約の包括的な見直しに積極的に参加するために会員に対して本件を検討するグループに参加を呼掛けた記事なのだが、STCW条約のこれまでの歩みや改正の経緯などが要領よくまとめられていると思うので、この記事をベースに私見を交えて条約の包括的な見直しについて、紹介することとした。もちろんこれはNIの会員に向けて書かれたものであり、NIとしての立場に基づき書かれていることは言うまでも無い。また記事全体も英国ないしは欧州の目線で書かれていることも面白い。いずれにしても文責は筆者にある。
 著者のDr. Malek Pourzanjani は英国人で航海士として11年ほど乗船し、その後エクゼター大学でPhD を取得し、現在はポーツマス大学で海上安全に関するコースの教授を務めている。
 先日回覧されたIFSMA Newsletter 72 でMichel Grey (IFSMA名誉会員で元Lloyd’ sListの編集長) が“Comprehensive education”と題してSTCW 条約の包括的見直しにともない次世代の船員をどのように教育するかについて書いているのだが、彼は文の最後でこのNIの記事をSTCW条約の包括的な見直しに関するもっとも重要な参考文書だとして、STCW条約に関心のある読者は是非読んでみるべきといっている。

STCW条約の歴史的経緯

 20世紀の後半まで殆どの先進国は自国の商船隊に自国民である船員を乗り組ませていた。しかしながら多くの出来事や国際情勢の変化を通してこうした仕組みは崩れ、これにともない他国籍の船員を乗り組ませるために自ずからその教育訓練要件などが統一され他国と調和するような方向に向った。こうした変化は言うまでもなく各国の船員の教育訓練システムに大きな変化を及ぼしたが、同時に船員自身の働き方や仕事に対する態度にも変化を及ぼすこととなった。
 過去50年間で船舶の所有と管理体制に関する最も大きな変化といえば、それは便宜置籍船の増大である。船舶の国籍(船籍)は人間と同様に最も重要な存在証明であり、どの国に於いても法律で国籍及び船籍港を登録するよう義務づけている。現在では船主はもっとも自己のニーズに合致する船籍を選択することは普通のことである。数世紀前でも外国あるいは海域によって自国船籍であることが不利あるいは危険であるとか地域によっては特定の船籍船が歓迎されないような場合は船主は船籍を変える事を行って来た。昔と違うのはそのスケールの大きさである。
 第二次世界大戦の直後、大規模な自国船籍から他国籍へのFlagging Out( 自国籍船の流出現象―便宜置籍船化)が顕在化した。この主因は経済的なものである。有力な船主も便宜置籍船化を行った。彼等は自国における煩瑣な規則や手続きを避ける、あるいは高額な税金を逃れるためである。また乗組員の雇用の自由、特定の国籍の船員を雇用すること、あるいは自国籍船が抑留される可能性や通商制限を避けるためである。この自国船籍の流出現象はとりわけ欧州の海運国、英国やオランダそしてドイツなどに種々の影響を及ぼした。これらの国々は単に有力な船主国であるに止まらず国際海運に対する船舶職員の供給国でもあったからである。
 かつて過去には多くの先進国に於いても船員はなかなか魅力的な職業であった。比較的待遇も良く、世界を旅する機会もあり、また船舶職員はそれなりに社会に於いて尊敬もされていた。しかし現在に於いてはこのようなメリットは全く通用しない完全に過去のものである。海上と陸上における賃金の差は過去数十年にわたり徐々に無くなりつつある。外国旅行などは手軽に誰でも行けるようになり、これを目的に船員を志望するような若者はいないであろう。港における停泊時間はどの船も短くなり、また多くのバースは街から遠くにあり、上陸の機会は非常に少なくなった。船内生活も大きく変わった。かつては小さな集団とは言いながら40〜50人の乗組員がいた。しかし今はほんの一握り、多分15人以下(?)となり、船内での交わりも座談もその他の活動も殆ど難しくなってしまった。職業としての船員のイメージも大きく損なわれた。マスコミは海難事故にスポットをあてるだけである。
 上記のような船員を取り巻く環境の変化と便宜置籍船の大幅な増加にともない、先進国の船員は劇的に減少した。こうした状況は1990年代にICS/BIMCOの“Man PowerReport”(月報第465号 2021年10月・11月号参照) が公表されるまで海運界においても意識されることはなかった。このレポートは船員の不足は単に乗組員の問題ではなく、陸上における海技員の不足にも現れていることに気づかせることとなった。必要とされる船舶職員数と実際に採用可能な船舶職員数に大きなギャップがあることが明らかになったのである。
 このレポートは5 年毎に発表され、最新のレポートは2021年のものである。これまでのレポートが強調してきたのは熟練した労働力が海運界から少なくなり、将来の発展に支障がでる恐れがあること、熟練船員の退職と若者の中途退職に備えて、船員の教育訓練の機会を増やすべきという点である。そしてそれに呼応するかのようにはっきりしたのは先進国の殆どは自国が運航する船舶の乗組員の国籍については拘らなくなり、先進国は運航に必要な十分な自国民の船員はもはや存在しないという厳然たる事実を受け入れたことである。先進国の懸念はこれまで自国の船員経験者が担ってきた職務(海務・海技監督、船級、パイロット等々)、これらは時として機密とも思われる情報を扱うセンシティブな立場にあるものも多いが、これらを充足する人材が不足しているという紛れもない事実である。そしてこのポジションを空白のままにしておくのか、あるいは外国の船員経験者を雇うのか選択を迫られている事実である。
 英国においてこの船舶職員不足に対して取られた最初の手段は1997年のトン数標準税制の導入である。これは外航海運企業である英国の船主に対する法人税を外形標準課税化したものである。この税制はオランダ方式に基づくものであるが、英国船籍を所有/運航する船主にたいして公平な競争の場をもたらすことになった。これは日本に於いても2008年から導入されている。この税制の施行後、英国船のトン数は20%も増加したと言う。もちろんこのトン数標準税制が英国海運助成の全てではないが、船員後継者の増加のための手段の一つであったことは疑いない。登録トン数の増加はもちろん乗組員、とりわけ職員の雇用の増大を意味し、また実習生の乗船訓練の場をより多く提供することになる。このため、英国政府はこの優遇税制であるトン数標準税制を選択する船主には乗組員15人対し、少なくとも一人の実習生を採用することを義務づけた。これについて筆者は英国船主の一人から、この税制は素晴らしいが棘(thorn)もあると聞かされたことがある。
 欧州レベルでは、欧州委員会がこの船員の不足、とりわけ熟練職員の減少に対して、2001年4 月に欧州議会及び閣僚理事会に対して ‘コミュニケーション(’ COM(2001)188final)を発出している。この‘コミュニケーション’は1998 FST and ECSA Joint Study (FST/ECSA, 1998) に基づくものだそうだ。その他にも欧州の船員不足については幾つかの報告書や研究があるが省略する。
 過去3 年に渉るコロナ禍で船員の乗下船や交代に大きな打撃が生じたことはこれまでも折に触れて述べてきたところである。船員の絶対的な不足に加えコロナ禍が海運界に及ぼした影響は大きい。今後は船員の絶対的な不足に対処すると同時に、自動運航船や脱炭素化などの技術革新の真っ只中にある海運界において、これに対処出来る船員の教育訓練は如何にあるべきかは重大な課題である。こうした状況下にあってSTCW条約の包括的見直しはむしろ遅すぎた感すらある。

STCW条約の包括的見直し  

 STCW条約の包括的な見直しは2023年2月に開催されたIMOの第9 回人的因子訓練当直小委員会(HTW:以下小委員会)で合意されたものである。これはIMOの条約や付属書、規則や通達などの全ての文書が常に最新のものであり、海事社会の実情と目的に沿ったものであることをコミットすることの具体化である。このため、これらの文書は定期的な修正と、必要に応じて大規模な改正を行ってきた。IMOで諮問資格を持つNGOとして、NIは会員の参加を得て、この重要な作業に参加することを目指している。ここでは、S T C Wの歴史を概説し、N IとしてSTCW条約の包括的見直しに対してどのように対処するのかを提案する。海運界はその労働力の高い移動性を有するグローバルな産業として認識されており、したがって国際商船隊の約300万人の船員が教育訓練と資格証明書の発行を監督する国とは異なる旗国の船舶で勤務しているため、これらの船員の能力基準と証明書の要件を統括するためには国際的な基準が必要であり、これがIMOのSTCW条約である。STCW条約は1978年に採択されすでに45年となる。
 船員の教育訓練は伝統的に各国の専権事項であり、またそれは国家の誇りの対象でもあり、国が置かれた環境や状況に応じて異なる形で進化してきた。1970年代半ばまで、世界の国々での船員の教育と訓練は、それらの国で長年にわたり発展してきた伝統と基準に応じて大きく異なっていた。これらの差異には、訓練および教育プログラムの内容と構造の両方が含まれていた。便宜置籍船の増大にともない乗組員の教育訓練や雇用について関心が高まり、国際的な基準の必要性を生じ、最終的には1978年に国際的な条約、STCW条約「1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約」の採択につながり、1984年4 月28日に発効した。この条約は1995年と2010年には大規模な改訂が行われた。

STCW 1978  

 1978年までは職員及び部員の教育訓練、資格証明書、および当直の基準は各国の政府によって決定され、他国のシステムがどのようなものかほとんど参照せずに行われていた。その結果、教育訓練の基準とシステムは広く異なっていたが、そうであっても海運は真にグローバルで国際的な産業であった。
 STCW 1978の最大の目的は船員の教育訓練、資格証明書、および当直に関する基本的な要件を国際的に確立することだった。条約は締約国が満たすべき最低基準を定めている。
 STCW条約の詳細についてはここに述べるまでもないと思うが、現行の条約は条約本文と次の6 章からなる付属書及びS T C Wコードからなっている。
 第1 章 一般規定、 第2 章 船長及び甲板部、 第3 章 機関部、 第4 章 無線通信及び無線通信士、 第5 章 特定の種類の船舶の乗組員に対する特別な訓練の要件、 第6 章 非常事態、業務上の安全、医療及び生存に関する職務細目、 第7 章 選択的資格証明、 第8 章 当直、である。
 2000年12月までに締約国は135ヶ国となり、世界の船舶トン数の96%を占めることになった。

STCW 1995  包括的な見直し  

 1995年に行われた条約の初の包括的な見直しを経て大規模な改正となったのは、条約を最新のものに保ち、国によってあるいは地域によって異なる解釈をもたらす「主管庁の満足に適合」‘to the satisfaction of the Administration’という曖昧なフレーズが混乱をもたらしているなどの指摘に対応する必要があると認識された結果である。改正条約の主要な側面の1 つは、上述のように付属書の内容を8 つの章に細分化された規則に変更し、おのおの章に強制要件であるコードA部(基準)とガイドラインであるコードB部(指針)を設け条約の適用を明確にしたことである。これにより、一部の国が付属書を強制的な基準のセットとして受け入れ、他の国が無視できる指針のセットとして受け入れるような問題が解消された。 「規則」への変更により、付属書への遵守が強制されていることに疑念がなくなった。
 もう一つの重要な変更は条約の締約国が、条約遵守を確保するためにとった行政上の手段に関する詳細な情報をIMOに提供することが求められたことだった。これには、教育および訓練コースの独立した評価、海技資格認証手続き、その他の要因が含まれている。これまでは条約の遵守及び実施は船籍国に委ねられ、寄港国の監査はポートステート・コントロールの一環として条約の遵守を確認するために行われる中で、IMOが遵守と実施に関連して直接行動を起こした初めての例である。
 各国から提出されたSTCW条約施行に関する情報は、IMOが指名した有識者パネルによって条約の十分かつ完全な実施のための措置が執られているか否かが審査され、その結果がIMO事務局に報告され、事務局長はこれを海上安全委員会(MSC:以下委員会)に対して報告する。委員会はこれを審査し条約を完全に遵守していると認められる国のリストを作成する。このリストがいわゆるホワイト・リストで、最初のリストは、2000年12月に委員会によって承認された。

STCW 2010 – マニラ改正  

 次の大規模な改訂は、1995年の包括的な見直しから15年後の2010年、マニラで行われた会議でいわゆるマニラ改正の採択により実施された。これらの改正案は、異議がない場合には自動的に受け入れられるいわゆる黙示方式の下、2012年1 月1 日に施行された。
 改正案は将来予測される課題に対処し、海事社会の進展に合わせて条約を最新のものとすることを目的に以下の重要な変更があった。
●資格証明書に関連する不正行為の防止策
●労働時間と休息時間の要件
●薬物およびアルコールの乱用の防止のための新しい要件
●船員の身体的適性基準の更新
●船舶部員に関する技能証明の要件
●ECDISなどの最新技術の訓練に関する要件
●海洋環境理解訓練及びリーダーシップとチームワークの訓練に関する要件
●電気技士の訓練要件および証明要件
●液化ガスタンカーを含む全てのタイプのタンカーに乗り組む船員の訓練及び能力に関する指針の更新
●安全保障に関する訓練および船が海賊の攻撃を受けた場合に船員が適切に対処できるようにするための規定
●遠隔およびウェブベースの学習を含む近代的な訓練手法の使用
●極海域で運航する船員の訓練に関する指針●自動船位保持装置(DPS)を運用する要員の訓練指針
 改正された付属書第1 章 一般規定は、ポート・ステート・コントロールが人命、財産又は環境に危険をもたらすと認めた場合は必要な措置を取ることが出来ると定めている。これは当該船の各種証明書の不備、本船が衝突し、座礁し、又は乗り揚げたこと、あるいは国際条約に違反して物質を排出したことなどが含まれる。

STCW条約の包括的な改正に対する提案?  

 STCW条約の包括的な改正に対する提案直小委員会と海上安全委員会にSTCW条約の包括的な見直しと根本的な改訂を要求する提案を行ってきた。豪州主導で第105回海上安全委員会に提出された提案に基づき委員会はSTCW条約の包括的な見直しを2026年に完了目標として作業を開始することに同意した。小委員会は、見直しを行うべき範囲を特定し、委員会が本件を審議するためのロードマップを提出するように指示された。要請の基本的な理由には次のものが含まれるが、もちろんこれに限定されるものではない。
●2010年の改訂が一種の条約の整理作業であり、包括的な改訂には至らなかったとの見方があること
●情報通信技術とデジタル化の主要な技術革新、船舶運航に新しい装置が導入されている事実
●サイバーセキュリティおよびサイバーリスク
●船舶の自律運航性、自動化のレベル、およびこれらが船員の教育と訓練に与える影響に関する現在の議論
●温室効果ガスの排出、脱炭素化、代替燃料および教育と訓練への影響
●シミュレーションおよび仮想現実などの学習技術の進歩
●乗船実習の期間とその訓練内容の質、特に電気技士の訓練
●海上教育訓練機関の品質基準
●性的暴行(Sexual Assault)とセクシュアルハラスメント(Sexual Harassment)、いわゆるSASHへの対処の必要性
 2023年に開催された第9 回小委員会にはSTCW条約の改訂に関する提案がいくつかの加盟国とNGOから行われ、これらは作業部会で検討された。小委員会は、審議を継続するため通信作業部会(CG)を形成することに同意した。この結果は2024年2 月に予定されている第10回小委員会に報告される。NIは通信作業部会のメンバーであり、現在はNIの会員からの意見を求めている。

NI(Nautical Institute)として積極的な関与  

 海事産業界からは、海事の専門機関であるNIに対してこの改訂作業に積極的に参加すべきとの要請と期待がある。
目的
 NI会員の経験と専門知識を活かし、STCW条約を最も適切な基準に引き上げ、海事産業界に高い付加価値を提供できる最も効率の良い領域を明確にすることを目指す。
目標
1 .S T C W条約の包括的見直しにあたり、NI会員のグループとしての知識と経験を結集し期待に応える、
2 .乗船実習の利点を正当化し、実習をより効果的にする方法、そして実習を補完するためのシミュレーションの適切な使用法を確立する、
3 .教育訓練、習熟、および評価のためのシミュレーションの利用/使用についてNIとしてのリーダーシップを世界に示す、
4 .NIと同様な他の組織や団体と協働し影響力の拡大を図る、
5 .陸上および海上における海運界として必要な主要なスキルの査定・評価方法(初期及び更新時)に焦点を当てる、
6 .STCW条約に含まれるべき新しい分野の技能、例えばITおよび代替燃料取り扱いなどを特定する、
7 .現行のSTCW条約から削除すべき領域を特定する、
8 .操船技術訓練の改善を図る、
9 .STCW条約の規則で規定するよりも効率的な技法(ベストプラクティス)のガイダンスが最も効果的な領域を特定し、NIがそれを作成する役割を検討する、
10.自動船位保持装置(DPS)の技能証明書が最低基準でなく高い基準となるように確保する、
11.タグボートの操船やオフショアエネルギーの運用など、特殊な技術がどのように証明されるべきかを検討する、
12.これまで同様人的因子に焦点を当てることを確認する。

会員の意見表明を!  

 NI は、Dr. Malek Pourzanjani のリーダーシップのもと、STCW条約の包括的見直しに関するIMOでのNIの参加を管理・監督するグループを設立することとした。このグループはIMOでの審議中に活動し、さらに改訂条約の施行状況をモニターしフィードバックするためにおそらく5 年間は活動を継続することになるであろう。このグループに興味がある会員は、NIに是非連絡して欲しい。

終わりに  

 今年の第10回人的因子訓練当直小委員会は2 月5 日~ 9 日に開催されるので、本誌を手にされる会員はその時既に小委員会の結果報告を目にしていることになるが、本稿を書いている1 月下旬現在のIFSMAや他のNGOなどの対処方針などを少し付記してみたい。
 小委員会には現在、Information Paper(参考資料)を含めて18の文書が提出されている。前回の小委員会以降の通信作業部会(CG)の報告書とこれに対するコメントが多いが、乗船履歴、代替燃料取り扱いの訓練、船内におけるハラスメント対策などが提案されている。
 IFSMAはSTCW 条約改訂にむけて作業部会の設置を決め、その議長をデンマークの副会長が務めることとなっていたが、彼が一身上の都合で急遽退会したため、空席となっておりIFSMAとしての対処方針について集約が出来て居ない。しかしこれまで通りIFSMAは事務局長を主としてIMO対応チームが適切に対処してくれるものと思う。IFSMAもNIと同様会員から包括的見直しに関するインプットを強く求めており、会員諸兄もSTCW条約の包括的な見直しについてご意見のある方は是非日本船長協会を通してIFSMAにコメントして欲しい。
 筆者自身としては、前述のMichael Greyが ‘Comprehensive education’ で触れているように自動運航船の到来を見据えて、海技者の幅広い全人格的な教育訓練を目指すものであって欲しいと思う。もとよりSTCW条約はあくまで条約であって、船員としての技能の国際的な最低基準を定めるもので大学のシラバスとは違うのだが、情報通信技術の進歩を軸としてますます高度に発展する運航技術を習得しさらにはこれを発展させるためにはより高度の教育訓練が必要と信じている。

参考資料

1 .2023年2 月16日 国土交通省 P r e s s Release
  「船員の資格証明要件等を定めるSTCW条約の包括的見直しを開始」
2 .2023年12月4 日 “The Maritime Executive” UK Creates “First-of-a-Kind” Mariner Syllabus With Industry Input
3 .“Seaways” December 2023 “STCW Review Shaping the seafarers of the future”
4 .2024年1 月8 日 “IFSMA Newsletter 72” January 2024 edition ‘Comprehensive education’ by Michael Grey、 IFSMA Honorary Member
5 .2024年1 月9 日付 “IFSMA HTW10 Brief”


LastUpDate: 2024-Oct-22