船内労働環境向上に向けた7 項目
(一社)日本船長協会 理事 赤塚 宏一
はじめに
海上における医療の専門誌“International Maritime Health Journal” という季刊誌がある。
この雑誌の昨年6 月に発行された2024年第2号に“Aggression, psychological violence and sexual harassment in seafarers in France”「フランスにおける船員への攻撃、心理的暴力、セクシュアル・ハラスメント」というレポートが掲載された。これはフランスの有力大学による年1 回の健康診断及び証明書更新のために受診したフランス船員のうち回答のあったおよそ800人のアンケート調査に基づくものである。これによると労働環境における心理的な攻撃・ハラスメント−性的嫌がらせを含む−は陸上の労働環境よりはるかに高く、これは船員の不安、抑鬱、虚脱感などを引き起こす危険性が極めて高い。そして女性船員は男性船員にくらべてこうしたハラスメントにあう機会は2 倍にものぼるという。このレポートを読んでいるといささか気が滅入るし、また今号の記事はこのレポートを紹介するのが目的ではないので、詳細は省くがごく簡単に紹介する。このレポートによると調査に応じた全ての船員の25%が過去12ケ月に何らかのハラスメントに会い、そのうちの女性の2 / 3 、男性の1 / 3 がセクシュアル・ハラスメントに会い、わずか2.5%がハラスメントや心理的なトラウマを経験した際に専門家の助言を求めたにすぎないと報告している。そしてこれらのハラスメントは今や“Shocking levels” に達しているとも評されている。
さらに2023年10月、デンマーク政府により発表されたレポート“CMSS Research Report-Bullying and harassment in the Danishmerchant fleet” も同様の数字を多く公表している。
もちろんハラスメントの問題は船員だけの問題ではないし、欧州だけの問題でもないことは言うまでもなく、2024年5 月に公表された厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」によると5 人に1 人(19.3%)の労働者が過去3 年間に職場でパワハラを受けたことがあると回答している。
今号は上記レポートにも関連して、如何にして船員の労働環境を向上させるかという前向きな問題について昨年9 月に発表された“Global Maritime Forum” の“Improving seafarer well-being” −Preliminary findings from the Diversity@Sea pilot project−「船員のウェルビーイングの向上 − Diversity@Sea pilot project(以後 プロジェクト)から見えてきたもの」の内容を少々紹介したい。このレポートにもちろんハラスメントの実態に関する多くの統計や数字が出てくるが、いずれも胸が塞がるような内容で今後は触れないことにしたい。
「船員のウェルビーイングの向上」
このレポートはコペンハーゲンに本部を置く“The Global Maritime Forum”(以後 フォーラム)によるものである。
この団体について筆者は浅学にして知らなかったのだが、2017年に設立された独立非営利団体で現在は15カ国以上の国籍からなる約45名のスタッフで構成される専門家集団である。その目的は世界の海上貿易の未来を構想することを目的とした海事産業の脱炭素化と、さまざまなバックグラウンドを持つ世界の船員のための魅力的で充実した海上生活の実現に焦点を当てているという。脱炭素化と船員の福利厚生というと少し方向性の違うようなテーマだが、船員の福利厚生問題を正面から取り上げる団体があるのは嬉しい。
この団体は海事産業の全体的な課題、つまり個々の利害関係者が解決するには複雑すぎる課題について議論し、新たな解決策と行動への提言を先進的なリーダーや専門家を結集することによって作り上げるという。活動のための財源は政府関係の助成金やフォーラムの構成員の拠出金や一般の寄付によっているようだ。
さて、ウェルビーイングについてはこれまでIFSMA便りで何度も触れたが、ここでも「身体的・精神的・社会的に健康であり、幸福度・満足度が高い状態」としておこう。
このレポートには「船員の制度改革なくしては世界のサプライチェーンは危機に陥る」とのコピーが付く。内容を見てみよう。
レポートは過去10ケ月にわたり12隻の船に乗り組んだ計400名の船員から得た5 万点に及ぶ船員生活に関するデータに基づくものである。この12隻の船舶はフォーラムのメンバーが運航するもので最低4 人の女性船員を乗船させ、女性に必要で適切な環境と設備を確保し、24時間365日利用可能な無線LAN を提供し、作業等に必要な個人用保護具を装備することが求められている。収集されたデータから、船員社会の現状を明らかにし、これからどのように船内の慣行を変え、海上で働く190万人の男女の船員が労働条件や環境を改善できるのか、明確な手がかりやヒントが得られたとしている。これをベースに海上での生活を安全で生産的、かつ魅力的なものにするための野心的なガイドラインと基準を定めることを最終的な目的としているが海事労働市場における将来のニーズを予測するための知見も含むものとなる。これらのガイドラインは、2025年初頭にフォーラムによって発表される予定とのことである。本誌が会員諸兄に届くころにはこのガイドラインが公表されているのだろう。
今回のレポートはガイドライン策定のための予備的な作業であるが、ガイドラインの骨子は次の7 点に絞ってある。
それは
1 .虐待、いじめ、ハラスメント
2 .雇用契約
3 .インターネットへのアクセス、社会との接点
4 .ヘルプラインへのアクセス確保
5 .親としての義務・権利に対する支援
6 .包括的な個人用保護具
7 .適切な訓練と透明性の高い評価システム
それでは項目ごとに内容を見てみるが、各項目は全て、「問題の背景」、「目標」、「このプロジェクトによる知見」そして「行動提案」の小項目からなっているが、もちろん逐語訳をするつもりはなく、会員諸兄と分かち合うべきと考えることを適宜記載したい。
1 .虐待、いじめ、ハラスメント(含むセクハラ)に対するゼロ・トレランス・ポリシー(Zero tolerance Policy)
2013年に発効した海上労働条約(M L C 2006)は、船員に安全で快適、そして人間性が尊重される職場を提供することの重要性を強調している。しかし、ILO(国際労働機関)やIMO(国際海事機関)のこうした努力にもかかわらず、虐待、いじめ、ハラスメントは依然として広範に蔓延していることは上述のとおりである。そしてハラスメントは増加の傾向にあり、またまことに残念ながら多くの場会、上級職員によってなされることが多いという。
船員は、いじめや嫌がらせを受けやすい。孤立、過酷な肉体労働、階層的な組織構造など、海上の特殊な労働環境は、船員をこうした行為に対する脆弱な立場に追い込みかねない。
こうした事件の多くは、被害者が報復を恐れて報告されない。船員は、いじめやハラスメントを報告した場合、問題児というレッテルを貼られたり、解雇されたり、あるいはブラックリストに載せられ船員としての雇用の機会を永久に失うリスクさえある。
こうした事態をどのように改善するのか。プロジェクトは船社や船員管理会社が明確な「ハラスメントに対するゼロ・トレランス・ポリシー」、すなわち虐待、ハラスメント(含むセクハラ)やいじめを断じて容認しないという政策を強く明確に打ち出し、会社として内外に宣言することがまず第一だとする。そのうえであらゆる機会を捉えて船員と関係者に徹底する。そしてハラスメントに対処する訓練の実施、このゼロ・トレランス・ポリシーをどのようにして導入・実施するかについての明確なガイドラインの作成を行う。また船員に対しては乗船前の研修、さらにその後は定期的に船内での集会での確認、ポスターや通達などを通して絶えず船員に自覚させるべきと提案する。同時にこのポリシーに反した場合にはどのような処罰が下されるのかも明確にすることも必要だという。
このゼロ・トレランス・ポリシーは単にハラスメントなどの発生を防ぐだけではなく、職場を安全で快適な労働環境に変え、事故を防ぎ作業能率を上げ、また何か問題が生じたときも迅速にまた効果的に対処する環境が整ったと、このプロジェクトに参加した12隻の全ての船舶からの調査から裏付けられたと いう。
2 .雇用契約
船員の明確な文書による同意なくして行われる雇用契約(乗船期間)の延長は当該船員に大きなストレスをもたらす。これらは船員のメンタルヘルスに影響を及ぼし、疲労感や倦怠感、そして職務に対する熱意を失わせ、ひいては作業の安全にかかわることが指摘されている。しかも下船の予定も立たないことはなお一層これらの不安要素に拍車をかける。コロナ禍の只中にあっては下船も帰国の予定も立たず、さらには寄港地もはっきりしない状況にあっては多くの船員に多大な精神的な負担を与えたのは言うまでもない。
一般的にグローバル・サウスと呼ばれる諸国から来た船員にとっては雇用契約の乗船期間は長すぎると考えられているようだ。長期間にわたり家族から離れ、職場の厳しい労働、不適切な休息時間、加えて船内の必ずしも快適とは言えない住環境はストレスに輪を掛ける。海上労働条約は明確に連続して11ケ月以上の乗船は認めないとする。(海上労働条約 第25規則 送還(repatriation)船員が送還される権利を有することとなるまでの船舶における最長の勤務期間は12ケ月未満とする。)この条文を遵守し、いかなる例外も認めないことをはっきりさせねばならない。雇用契約のいかなる変更も充分な時間的余裕をもって船員と協議し、船員の文書による明確な同意を得なければならぬことは言うまでもない。
今日の船員の大半は一航海単位契約で雇用されており、1 日平均11.5時間労働している。そして報告のあった船の90%は一週間毎の定期的な休日すらないという。雇用期間の短縮と契約延長の禁止は、船員の疲労に対処する上で極めて重要である。一方船員によっては家庭の事情などを考慮して契約期間の延長を望む場合もありうるし、また短縮を求める場合も当然ありうる。一般的に若い時は仕事を覚え、慣海性を養い、社会性を学ぶためにも長めの乗船期間が望まれるようだし、家庭を持つ頃になると短い乗船期間が好まれるのは自然だ。それぞれの船員にとって、“Not too long, Not too short” が必要と思われる。船員としてのキャリアをより魅力的なものにし、メンタルヘルスと福祉を向上させ、全船的な安全性を向上するために、それぞれの船員の事情や要望に応じて雇用期間の短縮や延長について柔軟に取り扱うことが必要と思われる。海運業界は雇用期間、雇用要件などを見直し、安易な契約延長や変更はするべきではないことは言うまでもない。いずれにしても船員の配乗担当者は個々の船員と連絡を密にし、それぞれの事情を把握し、いわゆる血の通った配乗を行い、また会社もそれを可能とするようなシステムを構築することが求められる。
3 .インターネットへのアクセス、社会との接点
今日のデジタル時代において、インターネットへのアクセスは、家族や友人との社会的なつながり、一般的なコミュニケーション、自己研修、情報収集のために不可欠である。
海上労働条約が起草された当時は、インターネット接続の重要性は今日ほど明らかではなかった(注:海上労働条約の起草から採択まで関わった筆者も全く同感)。現在では、ほとんどの家庭や職場でインターネット接続が標準装備されており、陸上の仕事では無料で提供されるだろう。長期間、家庭を離れて生活する船員にとって、インターネットへの接続は、家族との連絡を維持し、ニュースを入手し、オンライン教育を受ける上で極めて重要だ。インターネットがなければ、不満や孤立感、疎外感、寂しさを感じることが多い。
ある調査によると、いまだ13%の船舶がインターネット・アクセスをまったく提供していない。船社が十分なインターネット・アクセスを提供しない場合、船員はプリペイド・データカードに頼ることになるが、その多くは高額で、船員の精神的・経済的負担はさらに大きくなる。
このプロジェクトの目指すところは、船社が無料かつ十分なインターネット・アクセスを確保することは船内生活の質を大幅に向上させ、家族や友人との定期的なコミュニケーションを可能にすることで乗組員の幸福度を高め、オンラインによる継続的な学習や専門的な能力開発の機会を提供する。さらに、インターネット・アクセスを提供することは、若い世代を海運業界に惹きつける上でも重要であることを海事関係者一同によく認識してもらうことである。船員が不足気味で雇用市場において船員の売り手市場となっている現状で船員が船社を選択する要因として真っ先に挙がるのがインターネット・アクセスで、次いで船齢の若い船隊、年金制度そして医療保険というデータもある。
4 .ヘルプラインへのアクセスの確保
船員は孤立したストレスの多い環境で働くことが多く、メンタルヘルス問題、いさかい、虐待やハラスメントなど、さまざまな問題に直面する可能性があることはすでに幾つかのレポートで指摘されたところである。このような状況では、独立したヘルプラインを利用することで、苦境にある船員に重要な助言を与えることができる。 匿名、秘密厳守を保証する第三者によるヘルプラインを利用すれば、船員は報復やプライバシー侵害を恐れることなく、安全に助けを求めることができる。残念ながら、すべての船員がこうしたヘルプラインを利用できるわけではない。利用可能なヘルプラインの存在を船員全員に知らせ、その利用方法を知ってもらうことが不可欠だ。
ISWAN(International Seafarers’ Welfare and Assistance Network)、ノーチラスの24/ 7 、The Mission to Seafarersが提供するSeafarerHelpなど既にいくつかのヘルプラインが存在するが、多くの船員はまだその存在を知らず、連絡方法も知らない。(注:日本ではMission to Seafarersのサービスはmtsjapan.orgにアクセスするとコンタクト先と共に他の機関のメールアドレスも記載している。また筆者の関係する「船員の人権を守る会」(電話番号は、03-5422-7170)もある。)
すべての船員が匿名で利用できる、少なくとも1 つのヘルプライン(理想的には独立した第三者によって運営される)にアクセスするために必要な情報を与えるべきと考える。船員の視点に立った相談体制の確立が必要なのである。出来れば国際規則で船社の義務とするのが望ましい。このヘルプラインは、簡単にアクセスできメンタルヘルス、虐待、ハラスメント、その他個人的または仕事上の懸念など、幅広い問題に対する支援を提供する必要がある。このような情報を効果的に伝え、ヘルプラインの守秘義務を保証することで、企業は船員に対し、必要な時に助けを求めるための信頼できる情報源を提供することができる。乗船研修の際に、船員の個人情報がどのように守秘され、どのように匿名性が保証されるかを含め、ヘルプラインの利用可能性と目的を伝えることの重要性を強調したい。
5 .親としての義務・権利に対する支援
船員もいうまでもなく親としてあるいは一家の長(注:この言葉が今や妥当かどうかわからないのだが)として家庭的責任を負っている。乗船中のためこうした権利や義務を果たせなかった経験は船員なら誰しもあるであろう。このプロジェクトではこうした問題に焦点を当てているが、さらに女性船員の妊娠や出産、子育てについて陸上と同様かあるいは海上の特殊性を考慮してさらなる配慮を求める議論を展開している。ILOは出産休暇は普遍的な人権・労働権であり、少なくとも14週間続くべきであるとしている。さらに母親が休息し、適切に回復するための時間を確保できるよう、この期間を18週間の有給育児休暇とするように勧告もしている。現在、ILOに加盟する152カ国以上が有給の出産休暇と健康手当を法律で規定している。父親の育児休暇は世界的にあまり一般的ではないが、それでもほとんどの国が1 週間から2 週間の法定父親休暇を提供している。
このレポートでは海上においても少なくとも陸上と同等の待遇を与えるべきとしている。これは至極真っ当な主張である。本件についても詳細に伝えたいとも思うが、筆者には十分な知識もなく紙数の関係もあり本稿では深入りしないことをお断りしておきたい。
6 .包括的な個人用保護具
個人用保護具(Personal Protective Equipment:PPE)は船員の安全を確保するために不可欠であり、海上での作業にはすでに法的要件となっている。しかし、現行のPPE規定は、多様なサイズの必要性に適切に対応していないことが指摘され、多くの乗組員に潜在的な安全リスクと不快感をもたらしている。
このプロジェクトから得られた知見は、あらゆる体型にフィットするPPE、特にボイラースーツ、手袋、安全帽、防塵眼鏡、安全靴の重要性を強調している。これらのP P Eは、様々な体格の人に対応でき快適で適切な、そしてより幅広いサイズを取り揃えるか、調整できるようにする必要がある。これは直接的に安全遵守を強化し、労働災害のリスクを低減することになる。
7 .適切な訓練と透明性の高い評価システム
船上における適切な訓練と透明性の高い評価制度は、海上における公正なキャリア・アップの推進に不可欠である。しかし、海運界における訓練や評価システムの現状は満足のいくものとは言い難く、特に差別や偏った昇進を防ぐために改善の必要性があることを示している。多くの企業が訓練と業績評価のシステムを確立しているが、すべての船舶に明確で一貫性のある基準を適用することには継続的な課題がある。訓練や評価の統一性の欠如は、船員が公正かつ適切に学び、キャリア・アップする妨げになる。
このプロジェクトの知見では船員が公正かつ適切な方法で学び、働き、キャリアを向上させ、意見の相違や不公正と思われる点を上司に訴えることができるよう、全船舶で明確かつ一貫性のある評価基準の必要性を指摘している。また、学習や能力開発への平等なアクセスを可能にするため、レヴェルに応じた研修へのアクセスや、各レヴェルに必要な学習内容に関する明確な指針の重要性も指摘している。
船員は、透明性、公平性、客観性が実証された基準による定期的な評価や、レヴェル別研修の受講を強く望んでいる。そしてこれらの基準が安全管理システムにも盛り込まれ、透明性が確保されていることが望ましい。
このような透明性は船員の信頼を築き、仕事への満足度を高め、全乗組員の公平な待遇と一体感を醸成する。 これらの目標を達成するためには、乗船中のみならず乗船前や雇用期間中に、定期的かつ効果的にこのシステムや基準を船員に伝えることが極めて重要で ある。
おわりに
最近船員のメンタルヘルスやハラスメントに関するレポートを目にすることが多い。本稿にあげたもののほか、“Safer Waves reports” や“Danica-Seafarers-Survey-Report-2024” などもある。これは職場のハラスメントが経営の重要課題として意識され始めたことやMicro-Aggression(マイクロ・アグレッション−日常の会話などに潜む「見下し」「否定」のニュアンスが人権を侵害する深刻な問題と捉える)なども問題とされる社会の変化と直結しているのだろう。
このフォーラムのレポートはこうしたデータを踏まえたうえで一歩進んで具体的に船内の労働環境を改善するための提案を行い、これをまとめてガイドラインとしようとするところに興味を感じて会報に紹介することとした次第である。このプロジェクトの目標は、船内および海上サプライチェーン全体の労働条件に関するより良いグローバル基準を定義し、実施を推進することである。 このフォーラムは、関係者の誰もが安全で、尊厳と尊敬を持って扱われる業界を作りたいと考えており、海事産業がそれに関わる全ての関係者に与える影響を、ネガティブなものではなく、ポジティブなものにすることを目指している。そのことにより多くの優秀な人材を惹きつけ業界全体の健全な発達を目指すといえる。
このフォーラムは海上労働条約の完全な実行を目指し、さらには海上労働の特殊性に加え労働者保護のために用いられている普遍的な基準はすべからく海上労働にも適用すべきとの姿勢である。上記「5.親としての義務・権利に対する支援」はその一例である。
2025年4 月7 〜11日にジュネーブで開催される海上労働条約の改正協議は、こうした観点から審議されるように願っている。海上労働条約は単なる規制の枠組みを超え、理想的な船員のウェルビーイングが樹立されるような未来へと関係者を導くダイナミックなツールとなり得ると信じるからである。
参考資料
1 .https://journals.viamedica.pl/international_maritime_health/index
2 .https://globalmaritimeforum.org/human-sustainability/
3 . 日本経済新聞 2024年11月18日、19日 「深刻化するハラスメント」
4 .Lloyds List 2024年9 月12日、10月7 日、11月12日、18日、21日
5 .TradeWinds 2024年10月1 日
6 .Nautilus International “Telegraph” September/October 2024