外航船実態調査報告 第5回(2001年)

2001年11月19日発表
問題指摘船舶は増加傾向に、小型船の指摘件数は過去最悪
船長協会、第5回「外航船実態調査」を実施
 
 (社)・日本船長協会は、今年度の「外航船実態調査」をまとめました。何らかの問題があると指摘された船舶は全体の42.11%で、前年を2.66ポイント上回りました。船型別に見ると、小型船になるほど問題指摘船舶が多くなり、千トン未満の船舶の1隻あたりの指摘件数は6.71件と調査開始以来最悪の結果となりました。PSC(ポートステートコントロール)の強化や、一部船舶に対して強制化されたSOLAS条約第4章(船舶の安全航行の管理)に基づくISMコードにより、昨年度までは全体的には減少傾向を見せていましたが、今年度は増加傾向に転じました。
 
 この調査は1997年から毎年1回行われており、今年が5回目。今年は4月1日から30日まで、日本の各港に入港する外航船に乗船して水先業務を行っている全国39の水先区水先人に依頼して実施しました。
 調査項目は合計14で、設備・性能関係は船体整備、主機、操舵機、バウスラスター、揚錨・係船設備、レーダー・衝突予防装置、ジャイロコンパス、海図、パイロットラダー、性能表の掲示の10項目、乗組員関係がコミュニケーション、パイロット乗下船時の士官アテンド、船長・航海士の能力、部員の能力の4項目としました。調査対象となった1,413隻の船舶の国籍は51カ国、乗船していた船長の国籍は50カ国に及びました。
 
 何らかの問題が指摘された船舶を船型別に見ると、1万トン以上の船舶は37.69%であるのに対し、1万トン未満の船舶は60.97%で、昨年より差は縮まったとはいえ、依然として小型船になればなるほど問題指摘船が多くなっています。(別表1参照)
 
 船舶国籍別に見ると、調査対象船舶が5隻以上の国の中で、問題指摘船舶の割合が高い国は、カンボジア、ベリーズ、ロシア、中国、タイで、これまでの調査で全体的に問題の多かった北朝鮮国籍の船舶に代わり、カンボジア、ベリーズがここ数年、上位を占めるようになっています。低い国はバヌアツ、ドイツ、日本、デンマークなどとなっています。(別表2参照)
 
 船長国籍では、ブルガリア、ロシア、中国、ウクライナなどの国籍の船長が乗船している船舶の問題指摘船舶の割合が高くなっている一方、オーストラリア、スウェーデン、デンマーク、日本などの船長が乗船している船舶の割合は少なくなりました。(別表3参照)
 
 調査項目別に見ると、問題指摘件数が最も多かったのは海図で、1,413隻中304隻に何らかの問題があり、5年連続して最多の指摘件数となりました。ハーバーチャートを持たない船や、海図の改補が行われていない船が目立ちました。乗組員関係では、船長・航海士の能力について、「問題あり」と「やや問題あり」の指摘が合わせて11.11%となり、9隻に1隻がそのような船長・航海士によって運航されていることが判明しました。(別表4参照
 
 船齢別に見ると、調査対象船舶1,413隻の平均船齢は11.57年。入港船舶5隻以上の国の中で平均船齢が最も高かったのはカンボジアの23.50年。以下ロシア(20,64年)、ベリーズ(20.60年)の順。アメリカは14.44年、イギリスは12.63年、日本は11.41年となりました。最高船齢は45年の中国船でした。日本、マーシャル、イギリスは船齢に比べて船体整備関係の問題指摘割合が低く、保守整備が実施されていると推察される一方、中国、香港、ノルウェーは問題指摘割合が高く、保守整備が不十分と推察されます。(別表5参照)
 
 PI保険については、船長に対してアンケート方式で調査を実施、調査対象船舶の91.79%にあたる1,297隻はPI保険に加入していました。しかし、船長自身が加入しているかどうかを知らない「不明」が100隻を数えました。(別表6参照)
 
 5年前の調査開始以来昨年度まで、問題指摘船舶は徐々に減少してきましたが、今年度は増加に転じました。この調査は水先人が乗船した船舶に限られており、水先人が乗船していない船舶ではさらに問題点が多くなることが推察され、依然として日本には危険な船舶が多数入港しているものと判断されます。
 このため、交通管制制度の見直し及び水先制度の有効活用等により、問題船舶の排除に努めるとともに、特に小型船舶の動向に注視する必要があると考えられます。
 
 日本船長協会としては、2002年に全船舶に対して強制化されるISMコード実施後の調査結果に注目していく方針です。
(以上)

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