外航船実態調査報告 第6回(2002年)

2002年11月29日発表
問題指摘船舶数は減少するも乗組員の問題は改善されず
船長協会、第6回「外航船実態調査」を実施
社団法人・日本船長協会(澤山 惠一会長)はこのほど、「外航船実態調査」の結果をまとめた。この調査は1997年から毎年1回実施しており、本年も4月1日から4月30日までの1ヶ月間、日本の各港に入港する外航船に乗船し水先業務を行っている全国39の水先区水先人に依頼して、調査を実施したもの。
調査項目は合計14項目で、設備・性能関係は、船体整備、主機、操舵機、バウスラスター、揚錨・係船設備、レーダー・衝突予防装置、ジャイロコンパス、海図、パイロットラダー、性能表の表示の10項目、乗組員関係は、コミュニケーション、パイロット乗下船時の士官アテンド、船長・航海士の能力、部員の能力の4項目としている。

調査対象となった1、393隻の船舶の国籍は55カ国、乗船していた船長の国籍は54カ国であった。

調査船舶のうち、何らかの問題が指摘された船舶は全体では39.70%で、昨年の42.11%より2.41ポイント下がり改善された。問題指摘数でみると、設備・性能関係では877件(62.96%)で、昨年の1087件(76.93%)より改善されたが、乗組員関係では449件(32.23%)、昨年が445件(31.49%)、一昨年が461件(29.38%)で、指摘率は増加している。(別表1参照)
調査項目別にみると、問題指摘件数が多いのは、設備・性能関係では相変わらず海図の不備で、1393隻中273隻(19.60%)に何らかの問題が指摘されており、調査開始以来、問題指摘件数は常にトップとなっている。乗組員関係で何らかの問題が指摘されたのは、部員の能力が207隻(14.86%)で昨年の200隻(14.15%)より微増している。また、船長・職員の能力も152隻(10.91%)に問題指摘があった。これは問題のある海図を使用し、能力に問題のある乗組員が乗っている船舶が9隻に1隻の割合で日本諸港に入出港していることを示しており、昨年と同様の調査結果となっている。(別表2参照)
船舶国籍別にみると、調査対象船舶が5隻以上の国で1隻当たりの問題指摘数の多い国はベリーズ、カンボジア、中国、ロシア、セントビンセントで少ない国はオーストラリア、日本、マーシャル、バヌアツ、イギリス等となっている。ここ数年問題指摘船舶の割合や1隻当たりの問題指摘数の高いカンボジアとベリーズの悪化ぶりが他の国に比べて目立った。(別図1参照)
船長国籍別に見ると、インドネシア、オランダ、ラトビア、ロシア、中国等の国籍の船長が乗船している船舶に問題指摘船舶の割合が高くなっており、スウェーデン、オーストラリア、デンマーク、日本等の国籍の船長が乗船している船舶は指摘割合が低くなった。(別表3参照)
日本人船長の乗船する船舶の国籍は、日本を含め8カ国で、船舶数は185隻であった。この8カ国で日本人船長が乗船する船舶と外国人船長が乗船する船舶を比較すると、指摘船舶数(指摘率)は外国人船長が298隻(39.63%)、日本人船長は26隻(14.05%)となっており、日本人船長が乗船している船は、かなり低くなっている。(別表4参照)
船型別に見ると、1万トン以下の指摘船舶数(指摘率)は173隻(61.79%)であるのに対し、1万トン以上の指摘船舶数(指摘率)は380隻(34.14%)で、調査開始以来6年間1万トン以下の船舶の指摘率が高く、本年度は昨年より指摘率の差が大きくなった。(別表5参照)
船齢をみると調査対象船舶1393隻の平均船齢は9.55年であった。入港船舶5隻以上の国の中で平均船齢の最も高い国はカンボジアで20.17年。以下ロシア(19.45年)、セントビンセント(18.83年)、ベリーズ(18.50年)の順で、最高船齢はリベリアの46年であった。(別表6参照)
PI保険については、船長に対してアンケート方式で調査を実施し、本年度は調査船舶数1393隻中1284隻がPI保険に加入しており、加入率は92.18%であった。PI保険加入船の指摘船舶数は1284隻中505隻(39.33%)で、非加入船の指摘船舶数は21隻中13隻(61.90%)、不明船88隻中35隻(39.77%)であった。1隻当たりの指摘数は、加入船(0.89件)、非加入船(2.48件)、不明船(1.52件)となり、非加入船、不明船は加入船に比べ高くなっている。(別表7参照)
 
調査結果については、毎年改善傾向が見られたが、昨年は一転して悪化の兆しが現れ心配された。今回の調査結果を見ると、全体的には再び改善傾向にあると推察される。問題は、設備・性能に関しては改善傾向にあるが、乗組員関係、つまりソフト面については改善されていない点である。
船長・航海士の能力に改善が見られず、特に部員の能力についての指摘が増加しているという問題をはらんでいる。改善傾向にあるとはいえ6年連続で指摘率トップに海図の不備が上げられていることを考えると、依然として日本には危険な船舶が多数入港していると推察される。

今後は、サブスタンダード船排除となるPSC(ポートステートコントロール)の強化、水先制度の有効活用、交通管制制度の改革とともに、水先人が乗船しない外国船に対する情報の周知徹底が必要である。
また、本年より全船舶に対して強制化されたISMコードの実施状況と改正STCW完全実施後の乗組員関係におけるPSCの検査結果の動向にも注目すべきと考える。

(以上)

LastUpDate: 2021-Apr-07