第34回 秋田県鹿角市花輪小学校

作文/田中/川口/佐藤/中山/小田嶋/村木/米村
 (社)日本船長協会 技術顧問  池上 武男

公演中の筆者
1.開催に至った経緯

 東北地方の中央を縦断する奥羽山脈の北部で青森、岩手と秋田の三県が交わる県境の西側秋田県内に当時南部藩のもとで金や銅の産出で栄えた花輪がある。現在は鹿角市と言い温泉郷と農林が中心の静かな街である。ここに明治7年創立し131年続いている花輪小学校がある。
 船長協会の本事業は全国的に実施しているが東北地方での実績が無かったことから、この地方の出身船長を捜していたところ工藤隼五郎氏がいた。工藤船長に打診してみると二つ返事で引き受けてくれたのが前述の花輪小学校である。
 この小学校は、高杉現校長が創立以来42代目であるが、工藤船長の父上が27代目の校長であったこともあり、話は順調に進み今回の開催となった。工藤船長はこの歴史が古い小学校の卒業生の中で初めてかつ唯一人の船長である。
 氏は、同小学校を卒業し地元中学から花輪高校を経て、東京商船大学へ進み山下新日本汽船へ入社、退職後は盛岡市に在住している。彼は同行し世話はするが、講演は協会でやってくれとのことで私が講演することになった。


2.準備及び日程等

 工藤氏の紹介を得た後は、協会常務理事原田船長が学校側と直接連絡をとり、同校が実施している父兄が参加する「みんなの登校日」に合わせて11月28日(月)に実施することに決まった。
 原田常務理事が25日に現場に出向き、教頭の石井和光先生との事前打合せと機材テストを行い現場確認をした。27日(日)夕方、森本会長、原田常務理事、池上が工藤氏と盛岡のホテルで会合し最終打合せを行い、翌朝、工藤氏の車で学校へ向かった。
 東北自動車道を走る車中からは、あいにく雲が低く立ちこめて名山岩手山を望見することは出来なかったが、近くの山の麓には温泉場が散見され、まだ雪に覆われる前の山深い東北の景色を工藤船長の説明で楽しんだ。
 学校へ到着して、高杉校長に挨拶をし、鹿角市教育委員会総務学事課畠山課長と、たまたまこの事業を知って男鹿半島の近くから駆けつけた松野船長を交え面談して、13時45分から講演会が始まった。当日は地元の秋田魁新報社と北鹿新聞社が取材にきていた。


3.講演会

 講演会は同校体育館で行い4,5,6年生9クラス302名と15名の父兄及び関係者が集まった。
 同校の先生と女子児童の司会で講演会は始まった。高杉校長先生の挨拶、森本会長の挨拶に続いて、同校卒業生の工藤船長が当時の思い出と後輩達に、将来の夢を実現する為に困らないようにいろんな勉強をしておくように励ましの言葉を語った。
 続いて、私の講演であるが、最初に私が船員になったいきさつを話し、協会作成のDVD「海と船」を観て船の種類や運航のことを知って貰い、残りの30分を私の話に充てた。
 内容は、

 ①「日本の海とその大切さ」、
 ②「現代の海賊の話」、
 ③「私の印象に残った航海」

をテーマにパワーポイントの映像を見ながら話した。
 子供達からは、「どうして海の水はしょっぱいのか」、「材木を船の上に積んでも腐らないのか」、「海賊は捕まらないのか」などの質問受けて、最後に子供達を代表して石井悠登君からお礼の言葉を、また工藤あい李さんから鹿角名物のお菓子を頂いて、子供達全員の有難うございましたの合唱に送られて退出した。体育館の出口では子供達から握手を求められ戸惑いながらも感動を覚えた。


4.おわりに

児童を代表してお礼を述べる石井悠登君

 東北地方の内陸で育った子供達の中には、まだ海を見たことがない子供も居たかもしれない、事前の校長先生の話でも船や海の話は授業では全く教えていないとのこと、体育館の床に座って目を丸くして一生懸命聞いている子供たちの姿には大きな責任を感じる。そして、子供達に分かりやすく話すことがいかに難しいことかと思う。
 この事業の主旨である我が国にとって、大切な海洋と海運のことを少しでも知って貰い、子供達の将来への夢の選択肢の一つになればと思いながら、本事業の大切さと更なる発展を願う。


鹿角小学校教頭石井和光先生からの便り
 今まで船に関しての学習をあまり行ったことがなく、実際の「船長さん」を見たこともなかった児童にとって、講演の内容はとても新鮮なものでした。また、進路について考えることもなかった児童にとって、少しでも自分の将来について考える良い機会になったと思います。今後も、機会がありましたら、ご来校していただけることを楽しみにしています。
 本当に、ありがとうございました。
平成17年12月6日


北鹿新聞2005.11.30(クリックで拡大) 秋田さきがけ新聞2005.11.30(クリックで拡大)
作文/田中/川口/佐藤/中山/小田嶋/村木/米村

LastUpDate: 2024-Apr-17