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(社)日本船長協会事務局 |
IFSMA-Newsletter
IFSMAの機関誌とも言うべきIFSMANewsletterの最新号がホームページ(http://www.ifsma.org/)にUPされた。
このNewsletterは季刊誌で原則として年4回発行される。 体裁はA4版で35ページ程度、表紙はそのまま目次であり装丁も質素で写真も少なく、あったとしてもこれまではモノクロ写真である。
ギリギリの予算で運営されている団体としてはやむを得ない。
しかし、内容は充実している。Newsletterであるから、IFSMAの主要な活動拠点であるIMOの諸委員会の報告や動静に関する記事の多いのは当然であるが、そのほかに海事社会の業界誌のクリップや海事関係の会議の報告など、広く世界の海事社会に目を配り、会員の視野を広げるような記事を掲載している。
こころみに最新号の内容を少々紹介してみよう。
今号は6月に開催されたIFSMA総会、STCW条約改正のための締約国会議そして“2010 Year of the Seafarer Forum”をうけて発行されたNewsletterなので、当然これらの会議の報告に多くのページをさいている。
マニラでの会議については我々も本誌前号(398号)で紹介したが、このNewsletterの英文による紹介もまた参考になるであろう。
また珍しく電子版ではこれらの会議のカラー写真もある。
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巻頭言
まず最初は事務局長(Capt. Rodger M.MacDonald)の巻頭言ともいうべき“Some thoughts from your Secretary General”である。
事務局長はSTCW条約のいわゆる「マニラ改正」の主要改正点を示し、IFSMAとしてもっとも力を入れた船員の労働時間については、かならずしもIFSMAの望んでいたような形にはならなかったが、一部の国や団体から提案された船員にとって厳しすぎる労働条件は相当改善された内容となっているとしている。
海賊問題については国連の安全保障理事会の模様やNATOの活動を紹介している。
また今年は海賊の乗っ取り成功率は20%程度で、2007年の63%から大きく低下しているとの事である。
これはもちろん各国海軍や海上自衛隊の活動によるところが大きいが、商船の海賊対策の徹底と充実も貢献している。
環境汚染に関連する船員の犯罪者扱い問題では、各国の油による汚染の検知体制、特に人工衛星を利用した体制が格段に整備されていることを報告している。
これはメキシコ湾の原油流出による汚染事故によって一段と強化された。
特にCleanSeaNetと呼ばれる人工衛星による監視体制は現在欧州海上保安庁(EMSA)とその沿岸国で利用されているが、水面に油膜らしきものを検知すると30分以内に沿岸国の主官庁に通報される。
沿岸国は直ちに監視用の航空機を現場に派遣し、油膜の確認と現場付近の船舶の動静を把握する。
必要に応じて艦艇を派遣し汚染物質の採集、分析、さらに嫌疑を掛けられた船舶の臨検を行なう体制である。
こうした沿岸国の防汚染体制の強化に鑑み、事務局長はタンカーのオペレーションはもちろん、補油作業においても細心の注意を払うように呼びかけている。
Marine Highwaysとして知られる米国のモーダルシフトについても言及している。
米国運輸省の新しい優先課題は、目新しいことではないが貨物の輸送を極力水路に振り向けるモーダルシフトである。
遅ればせながら多くの港に接続する水路をMarine Highwayと称し、これらを新たに整備すると同時にその利用を奨励する。
日本では現在、瀬戸内海の観光振興と地域活性化を目指して広島県がその成長戦略「瀬戸内 海の道構想」を策定中であるが、これに似た所があるのかもしれない。
日系人であるマツダ米国海事局長によれば米国はあまりにもトラック輸送に頼りすぎて
いる、これは環境保護の面でも、経済的にも、あるいは社会的にも好ましいことではない。
今後とも経済の成長にあわせ貨物輸送は伸びるし、トラック輸送の需要も大きくなること
は必然だが、そのいくらかをMarine Highwayにのせたい。
こうしたバージやコースターを運営する企業には往復航の貨物を保証する仕組みを作る。
クレーンやバージを購入する資金や港の整備に連邦政府の資金を用意する、などの施策を講じる。
マツダ米国海事局長によれば、Marine Highwaysを利用するのにもっとも適した貨物の一つは危険物だという。
Marine Highwaysは多くの場合人家を離れたところに位置するからである。
IFSMAの事務局長は輻輳するミシッシピー川のバージ輸送や五大湖の内航船の賑わいをイメージしていたので、米国の沿岸や内水の貨物輸送がこれほど低調とは想像していなかったとして驚いているが、Marine Highwayの成功を心から望んでいると結んでいる。
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ホルムズ海峡
7月に起きた商船三井のタンカ-に対するテロについては、その旗国であるマーシャル群島のMarine Safety Advisory No.69-10の記事の抜粋を掲載している。
事故の報に接したマーシャル群島政府は直ちに軍関係者と政府官憲を調査のためにフジャイラに送ったし、むろんこの時点では損傷の原因を特定することは出来ないが、テロの可能性は高く、同海峡を通航する船舶は厳重な注意が必要としている。
ここまでは目新しいことは何もないが、同海域で不審な小型船を察知した場合の連絡先として海軍関係への連絡先が記載されているのが役に立つかもしれない。
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“Master Mariner”and“Captain”
カナダの船長協会の機関誌“From the Bridge”からのクリップを掲載している。
欧米ではMaster MarinerやCaptainの語源は興味を引くものらしく、これまでも多くの記事を目にしている。
日本の場合は文字通り船の長、船長でとてもわかりやすいし、辞書をひいても船長の職務権限や責任について述べたものが殆どが、英語ではその語源や多彩な用法が記載されている。
英語圏では商船の船長については、CaptainよりMaster Marinerを使う方が多いとおもう。
特に自称する場合はMaster Marinerでこの記事のカナダの船長協会も“the Company of Master Mariner,Canada ” となっているしIFSMAもInternational Federation of Shipmasters’Associationsとしている。
これはやはりCaptainが本来海軍用語だからであろう。
さて、このカナダ船長協会の記事によるとMASTERはラテン語のMagister、すなわち十分な知識を持った指揮者を意味し、MARINERはこれもラテン語のMarinus、海を意味する形容詞からきているという。
Masterをラテン語ではmagistrumと説明する語源辞書(Origins of Sea Terms)があり、次のように記載している。
“Master:The word goes back, via Old English and Anglo-Saxon, to Latin, magistrum, meaning master.
聖書(新訳)にももちろん船長は出てくる。
使徒言行録27章である。
しかしこれがキング・ジェームス欽定訳(1611年) ではMasterで、現代のToday’sEnglish Version(ed2)ではCaptainとなっているので、話が少しややこしくなる。
聖書(使徒言行録)の英語訳の原典はギリシャ語であり、ギリシャ語には船長の名詞があり、それは“Ilioikov”である。その意味は“~ to whom the government of the ship is entrusted”だそうである。
船長の職務権限が明確に法律の形で記載されたのは、12世紀のオレロン海法で、これは今でも海商法の基礎をなしているというが、いつの時代にも船長はMasterと表現されて来た。
従ってMasterという言葉は800年も前に確立された呼称である。
このオレオン海法が各地域に広まる過程で、翻訳者や講師は幾つかの注や解釈を施したが、船長については、
“The title of Master is so honourable and the command of a ship so important that great care has been taken by all maritime nations that none may be employed but honest and experience men”
と書かれているという。
Masterという言葉はその後も各国の海事法のなかで確立した呼称として残り、最近の国際法、例えばSTCW条約でもMasterとなっている。もちろんMasterという言葉は、
多くの場面で用いられるわけで、それだけにMarinerは重要な意味をもつ。
ひところ船長をShip Managerと呼ぼうとするような会社もあったが、幸いにしてそのような動きはいつの間にか消え去った。
権威も伝統もあるMaster Marinerの称号に誇りを持ちたいものである。
昇進し船長に任命された若い船長が自分の名前の後に誇りを持ってMMと書き加えるのは晴れがましいことである。
Captainの称号については、IFSMAのホームページのトップに「The Courtesy Title of“Captain”」というコラムがある。
これと合わせて読んでいただければ面白いと思う。
なお、日本船長協会松田常務理事によればMasterとCaptainについて京都大の佐波宣平教授の「海の英語」に次のような記述がある。
① 「私は、すでに1951(昭和26)年2月、神戸で催された日本船長協会のある会合で同席の船長諸氏に尋ねたことがある。
『自分たちの間では、この二つを違った意味に用いていない。』これがその時に得られた返事であった。」
② 「現在イギリスの民間海事関係諸法規では、1894年の海運法(Merchant Shipping Act)をはじめとして、『船長』を意味する場合必ず“master”でもって用語を統一している。
おそらく、民間商船で『船長』を意味するときmasterをcaptainよりもしばしば用いるゆえに、このように用語を統一したのであろうかと推測される。」
さらに、NI(Nautical Institute)のTheShipmaster’s BUSINESS COMPANIONのIndexではmasterの項目は多数あるが、captainは載っていない。
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Funny short story
小話というかジョークというか、毎号、幾つかの面白い記事がNews letterの埋め草として掲載されている。
最初の頃は船乗りを扱った物、例えば難破船の船長が海へ飛び込むよう各国の乗客にけし掛ける有名なブラックジョーク、などが多かったが、さすがにネタも切れたのか、最近はジャンルを問わないようである。
英語のジョークを理解し楽しむのはやさしくはない。
英語の知識のみならず背景となる歴史や社会的な要素を理解する必要があるからであろう。
今号に載った“A young Monk”も肝心な言葉が異字体であったこともあって、何がおかしいのかほぼわかっても今ひとつ合点が行かない。
辞書と格闘のうえやっと判ったが、ヤレヤレそういうことだったのか思うだけでとても笑うような余裕はない。
念のためにサワリの部分だけ引用してみよう。
話は、若い修道士が教典の写本を作っている修道院に派遣される。
ところがその修道院では写本から写本を作っている。
そこで修道院長に、『もし誰かが一箇所でも間違えたらその誤りは修正されることなく、その後の写本全てに残るのではありませんか』と指摘したところ、修道院長は『それもそうだな、それでは一度原典に当たってみよう』と地下の書庫に下りていった。
ところがいつまで経っても修道院長は戻ってこない。
さすがに心配になって、若い修道士が地下へ下りていくと
He sees him banging his head against the wall and wailing,“we missed the“R”!, we missed the“R”!”
His forehead is all bloody and bruises and he is crying uncontrollably. The young monk asks the old abbot,“What’s wrong, Father ?”With a choking voice, the old abbot replies,“The word was …..“CELEBRATE! ! ! !”
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〈閲覧と投稿の勧め〉
このNewsletterを閲覧するのはIFSMAのホームページ(http://www.ifsma.org/)から、左欄のNews→newslettersにアクセスすればよい。
バックナンバーも掲載されているので簡単に読むことが出来る。
今号もここで紹介したのはごく一部でその他にも海事社会のホットな話題が盛り沢山である。
IFSMAとしては、業界誌のクリップやIMOの報告などに止まらず、各国のメンバーからの記事を熱望している。
当然それぞれの国や地域の事情を反映したホットなニュースがあるはずで、こうした記事が多く集まればIFSMAのNewsletterも国際的なNewsletterとして権威を持つであろう。
もちろん日本船長協会も大いに発信をしてゆきたいと考えている。
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