会長年頭の挨拶

 

昨年は大変な年でした。3月11日に突然襲った、東日本大震災、原発事故、恐れていた格納容器のメルトダウンまで起こしている模様と報道されています。多くの犠牲になられた方々へあらためて哀悼の意を表します。また寒い時を仮設住宅で過ごされている方々のご健康と、早く再帰出来ることをお祈り申し上げます。去年の今頃はだれもこのようなことを予想だにしていませんでした。津波が沖から襲ってくるテレビの映像、船がコントロールを失い、潮のなされるままに動きまわり、岸壁、船同士がぶつかり合い、陸に擱座した場面は深く脳裏に焼き付いています。直ちに、災害救助活動に尽力された自衛隊員、海上保安官、消防関連の方々、地元の関係者等の活動に深く頭が下がります。その後、徐々に瓦礫がかたづけれられていく映像も見るようになりました。東北地方の工場からの自動車部品の供給ストップや電機産業の製品の製造停止、また交通網寸断の影響も日本経済に大きな打撃を与えました。

次に我々船乗りにとって一番懸念することは海賊問題です。船舶の航行安全を阻害している、ソマリア沖・アデン湾、インド洋全域に及ぶ海賊事件の減る気配がないことです。減るどころでなく、増えているのが現状です。残念ながら人質数も現在320名を超えています。各国の艦船、合計30隻前後の警備活動にも拘わらず海賊行為が凶悪化、広域化してきています。ソマリアという国が暫定的だということもありますが、なんとか海賊行為を早急に止めさせなければなりません。身代金は足元を見られ上がっている模様です。日本からの自衛艦2隻の派遣、P-3C哨戒機2機での護衛作業にあたってもらっています。またジブチの基地の新設含め自衛隊員、海上保安庁の方々、関係関連者には深く感謝申し上げます。各国の協力で一日でも早く解決するよう進めていただきたく、日本船長協会もできることは協力していく所存です。

日本の経済は大震災の影響によりスローダウンをしているのにもかかわらず、何故かドルの換算レートは円高に大きく振れたまま戻りません。ドルで決済している海運会社の収入にも大きな打撃を与えています。また10月のタイを襲った大洪水でメーカーの海外移転がここまで進んでいたかと見せつけられました。加えて昨年の後半より急激にギリシャをはじめポルトガル、スペインのユーロ国が債務不況に陥りました。なんとか混乱が起きないよう願います。世界の荷動きは日本、中国、その他アジアからヨーロッパ、米国向けが鈍り、 また中国の消費の低下による原料の輸入減、インドのインフレ等により厳しい状況です。12月に入り数隻のVLCCが処分に入ったといわれています。
さて本年はどのような年になるか。
一部の新聞では世界的に経済活動が低迷するなか、日本経済が存在感を高め、復活への足掛かりをつかむ年になりそうだとも書かれており、この点を信じたいです。
このような状況ですが、船長、乗組員はより細心の注意を払い、安全運航に務めてほしいと思います。船長は入港準備、港に入ってからの関係来船者への対応で気を張ることが増えてきています。ポートステートコントロール、荷主の検査強化、船級の検査、その他のチェック等、ますます厳しくなってきています。

日本船長協会の正会員数は昨年より若干減員となって534名(11月末現在)で、ほぼ横ばいに推移しています。会員の皆様に技術面でお役に立つこと、IMOの動向、国際ルールの改訂等に目を配り、その対応等についてお知らせしてまいります。また国交省関連の安全についての会議、日本諸港湾の安全航行に関する調査委員会にも出席し、操船者の立場にたっての意見、考えを発言していきます。対外的には国際船長協会のメンバーとして年2回の理事会(うち一回は総会も含む)に出席し、意見交換を行なっていきます。
11年目に入った事業「船長、子供たちに海と船を語る」も積極的に実施しており、すでに100校の中学校、小学校の訪問を重ねてきました。子供たちは我々の話しをよく聞いてくれており、少しでも海、船にたいして興味を持って、知識を増やしていくきっかけになればと考えます。

なお、日本船長協会は新公益法人制度に則り、今年の四月を目途に、『社団法人』から『一般法人』へ移行すべく準備を進めています。

平成24年が良い年となりますように、会員皆様のご健勝とご安航を心からお祈りします。


LastUpDate: 2025-Jul-01