独立行政法人航海訓練所船長 桑原和榮 | |
一年前、日本船長協会の月報「Captain」に、出身高校の近傍の中学校において『子供達に海と船を語る』が開催されたことを知り、自分でもこの活動に協力させていただきたいと申し出たところ、今年の3月になって、この講演の具体的な日程が決まった。私は埼玉県の北部に生まれたが、父親の転勤により5歳で引っ越したため、高校生になって再び戻るまで、「母校」と呼ぶ小中学校は別のところだった。「船長、母校へ帰る」という企画はできなかったが、母校以外でも開催可能なことを知って、埼玉県教職員となった高校時代の友人達に声をかけたところ、クラスメートが教諭で赴任している今回の児玉郡神川町立神泉中学校での講演が実現した。 埼玉県北西部の群馬県境に近い神泉中学校は、四方を山に囲まれ、紅葉の中の道を縫って学校へと向かった。生徒数は少ないが教育熱心な中学校で、私の講演の翌週には早稲田大学に留学中の外国人を招聘して交歓するため、授業で各外国人の母国の調査を行っていたところを拝見させていただいた。 山間のため海や船というものを知ってはいても、実際に船が貿易上どのような活躍をしているのか、どんな種類の船があるかは、初めて聞くらしく、すべての生徒が真剣な眼差しで森本会長の話を聞いていた。彼ら同様、海なし県でうまれ育った私が、小学校の遠足で横浜港の船を見てから船に乗ろうと思ったことや、所属する航海訓練所の帆船ではどんな訓練をしているのか等の話の後も、鋭い質問が飛び出してきた。小さいころの夢・あこがれの仕事を実現する素晴らしさを説明して、講演を締め括った。瞳を輝かせて耳を傾けてくれた彼らの中からも、私と同様、海と船に憧れる若者が出てくれることを期待しながら…。 (独立行政法人航海訓練所船長 桑原和榮記) |
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お礼の言葉、生徒達の作文 |