第8回 福岡県福岡市立高宮小学校

船長協会理事 金子 靖治

 船長協会創立50周年記念事業として、昨年度より実施されている「船長母校へ帰る」の企画は、今年度より日本財団の助成事業となった。
私は、この助成事業の2番バッターとして、去る6月30日、母校の高宮小学校の4・5・6年生を前に、Presentationを行ったので、ここにそのご報告を申し上げる。
日本財団は、海事思想の普及にはかなり力を入れており、この企画は更にGrade upして長く存続するものと期待される。

 1992年、Christopher ColumbusのAmerica到着500年を記念して、彼の生誕の地、ItaliaのGenovaで開催された「国際船と海の博覧会」は、当時の運輸省主導で準備されたが、目玉は、船の科学館によりFloating
Pavilionに改装され旧青函連絡船の「羊蹄丸」であった。
私は、その「羊蹄丸」の船長として、上記Genova博に参加して以来、日本財団や船の科学館等との縁が続いている。
その後「羊蹄丸」は、青函連絡船の面影を残すべく若干の再改装を施され、お台場の船の科学館前面水域に砕氷船宗谷にならんで係留、一般公開されている。
船の科学館では、職員が全員、船の制服を着用しているのに接し、本職の船長として、戸惑った記憶があるが、この船の科学館は実に素晴らしく良く出来ている。1日を費やし、ゆっくりと見学される事をお奨めする。

 さて、私のPresentationは、昨年度の50周年記念行事の菊池前会長、澤山前専務の次の次の4番バッター程度でどうかと、当時の専務、澤山さんより打診があり、早速母校の高宮小学校に打診したところ、「平成12年度は行事予定が全てFully
set upされているので、平成13年度でお願いしたい」とのことであった。

平成13年の新年となり、西田拓校長、森田博美教務主任のお2人と、Phone、Fax及びE-Mailで連絡をとり、6月30日の土曜日の午前中、4・5・6年生全員約160名を対象に、体育館にて講演を行うことが、本決まりとなった。
小学校の行事がこれほど過密だとは、私には到底予想も出来なかったことであるが、実際に我が母校で、先生方や生徒に接して、温かで真摯な指導者のもと、素直でのびのびした子供達には、この様な過密な行事の悪影響はないようで、安心した。

 学校の荒廃が取り沙汰される昨今ではあるが、小学校ではむしろ我々の時代より、のびのびとした優しい子供達に接して、ほっとしたものである。
もっとも、制服制帽姿の船長を目の当たりにしたことも、外国航路の船長の「体験談」を聞いたことも初めてのことであったであろうから、私語もせず目を輝かして聞いてくれたものである。
加えて今回は、船長協会の名誉会員で、このProjectの発案者でもある、高名な柳原良平画伯が、描画のDemonstrationのみならず、私の話にあわせて、イラストを描いて下さると言う豪華版であったこと、及び私の話題も船乗りが聞いても興味深く聞くような話題を選んだこともあり、子供達には又とない良い機会となった。

 学校側と事前の打合せは主としてE-Mailで、必要に応じてFaxとPhoneにて行い、実際にお会いしての打合せは、前日となった。
前日は、澤山新会長にも同道戴き、会場やOver Head Projec-tor等の下見をした。
昭和25年に卒業して以来の訪問であったが、所在地は変わらないものの、脳裏に焼き付いていた大木が見当たらず、母校という感慨は直ぐには湧いて来なかったが、校長室で当時の校長先生の肖像写真を拝見したり、「船長さんお帰りなさい」の看板で歓迎されたりしているうちに、そしてまた、小泉首相ではないが、ちょっとRichard
Gearを感じさせる西田校長先生と美しい森田先生、優しい保健の先生達に育まれた、屈託の無いのびのびとした子供達に接しているうちに、自分は良い小学校を卒業したのだなーと、幸せな気持ちになった。

 全国高校野球大会で、よく伝統校とか校風と言う言葉を耳にしても、「昔は昔今は今」の私には縁の遠い言葉であったが、歴史の古い学校には、脈々と生き続ける良きものがあるのでしょう。
西田校長の言葉「この学校の生徒は皆良い子ですよ」、気負わずさらりと出て来たこの言葉、心に残る言葉となった。

福岡に生まれ、高校まで過ごしたこの地には、当然幼友達が多い、「古賀 勝」と言う男、小中高全ての母校で同窓会の幹事役をしてくれている。
彼に一報を入れたことで、恩師や幼馴染が駆けつけてくれた。
再会と言うより、新しい出会いが新しい親交の始まりとなった。
少々期待はずれであったのは、一般報道で、船長協会が「土井全二郎」氏を通じて情報を流したにも拘わらず、読売新聞の記者一人であった。

 尤も、日本財団提供の、日本レジャーチャンネル「情報360゜」の録画撮影のため、日本財団からとVision FarmのDirectorとCameraman等のStaffがきてくれたが、わずか3分の放映なのに講演の後も1時間以上の撮影で、番組制作の苦労を体験した。

海事思想普及のための企画であるので、この時のみならず、後の7月23日、同じく「情報360゜」斎木しげるさん司会の30分番組の録画撮りに、三田にある笹川記念会館6Fの㈱日本レジャーチャンネルまで出向いた。
但し、この番組は、競艇実況放送その他の有料番組で、誰でもが見られる番組ではないようだ。やはり、NHKで放送されている「ようこそ先輩」のように全国ネットで紹介されると、日本人の海や船への関心が高まるのに、と思う。

 講演の内容は、自己紹介からアレキサンドリアの浮き灯台、アフリカで見た蜃気楼、昼間に金星と太陽で正確な船の位置を知ることができたこと、アマゾン河のマナウスとパラ河のベレン、コロンボ500国際船と海の博覧会、マゼラン海峡とパタゴニア・チャンネル等で、授業をするのでは無く、子供達に面白い話をしよう、聞いたことの無い話をしようと思っていたのだが、話題の数にこだわり、当日は、話すスピードが速くなり、子供達のレベルで話すことができなかったと、悔まれたが、後で先生のコメントや子供達の感想文を読んで、それなりに理解してくれたようで、胸を撫で下ろした。


LastUpDate: 2024-Mar-25