東海大学教授(元商船三井船長) 池田 宗雄 | |||
船長協会の行事「船長母校へ帰る」のシリーズの一つとして、平成13年3月5日、渋谷区立富谷小学校で、海運や船舶の話を致しました。話の内容は当協会の会員の皆様が十分にご存知のことであり、貴重な紙面を費やす必要はありませんので、今後話をされる皆様にご参考になればと思い、どのような準備をし、どのように話したかの“how
富谷小学校は、平成12年に創立70周年を迎え、そのための行事・式典、ならびにこれに合わせて、当時学童疎開で卒業式が行なえなかった学童への卒業証書の授与式などで大変忙しいときでした。この卒業式はNHK・TVで全国放映されたのでご存知の方もあると思います。吉川校長先生との打ち合わせで、5年生が、貿易、わが国と外国の関係について勉強をしているとのことで、5年生2クラス、44名を対象に話すことに致しました。人数が少ないようですが、少子化の影響で、これでも渋谷区では大きな小学校なのです。視聴覚関係の機材は、スライド、OHP、大型TVがあるとのことで、OHPとビデオを使用することにしました。
講演の筋書きは、日本船主協会が毎年作成しているパンフレット「SHIPPING NOW」を参考に構想を練り、Q&A方式で行うこととしました。 PCCの大きさを理解してもらうのに自動車が船内を高速で走り回る画面を見せました。露天掘りの石炭の発破と長さ2kmのユニットトレイン、コンテナ船の荷役などはビデオが有効で、話だけでは伝えることのできない臨場感を伝えることができます。 VLCCの大きさを理解してもらうのに、OHPの写真に乗用車を同じ縮尺で描き、甲板上に乗用車を2,000台並べることができ、50kgの人540万人の重さを積載することができるなど、他との比較で大きさを理解してもらうように努めました。航空機との比較では、日本で1日に使用する原油はVLCC2隻分であるが、これをジャンボジェット機に積めば何機必要かという問題も用意しました。ジャンボの機体は100トン、燃料100トン、積み荷100トンで満載の離陸重量は300トンです。世界には1000機のジャンボがありますが、全部使用しても日本の1日の使用量の1/6しか積めません。100トンを輸送するのに燃料を100トン使用するので、実際は航空機で原油の輸送はできません。このような話で輸送モードの説明をしました。 食料、エネルギー、工業原材料の海外依存度などの話が終わり、これらの物資を大量に海外から購入しているが、支払う代金はどうするのかと質問をしましたが、さすが都心の小学校です。すぐに製品を輸出して得た外貨で支払うとの答がかえってきました。 話の中で強調したのは次の点です。 ●日本は、衣食住、エネルギー、工業原料など多くのものを海外に依存している。このため、わが国は世界が平和であり、世界の国々と仲良くしていかなければ生きていけない国であること。 ●海外から多くのものを輸入しているが、この代金を支払わなければならない。資源のないわが国は、加工貿易によって得た外貨により代金を支払っていること。このためには高い技術力を持たなければならないこと。 ●輸出入貨物の重量で99.8%が船舶により輸送されており、船がなければ日本は生きていけないこと。 校長先生との打ち合わせで最後に質問の時間をとることにしましたが、5年生はとてもおとなしく、質問が出るかどうか心配だといわれましたが杞憂でした。話が終って質問のある人と言いましたら、全員が一斉に「はい!はい!」と元気よく挙手をしてくれ、誰を指名していいのか迷いました。
最近、小学校が荒れているとか、学級崩壊などがマスコミで話題になっていますが、休憩もなく90分の授業で、全員が非常に行儀よく、熱心に話を聞いてくれ感敵しました。3月は他にも3回講演を行いましたし、今までにも何回か講演を行っていますが、富谷小学校での授業ほど楽しく話のできたことはありません。中学・高校時代の同級生で、エレクトロニクス商社の社長をしている窪田君がカメラマンとして参加してくれましたが、どの写真もとても楽しそうに話している雰囲がよくでていました。 |