第60回 熊本県上天草市立大矢野中学校
第61回 熊本県上天草市立阿村中学校

三井室町海運株 式会社 顧問 吉本 公則

1.開催に至った経緯及び日程等

昨年の夏、里帰りの折に郷里の熊本県上天草市の大矢野中学校、阿村中学校、今津中学校を地元の船主さんと共に訪ね、海や船の魅力を子供たちに教えて欲しいと「OceanGate」「ラ・メール」などを携えて、校長先生、進路指導担当の先生にお願いして回った。€
各校の先生は、「当地は非常に海運会社が多く、海運経営者や船員を職業とする市民も多いが、子供たちに解かり易くお話をして戴ける講師が見つからず苦慮していた」との事であり、父兄への説明を含めて直接生徒へ「海と船」について話して貰えないかとの要望が出された。€
帰京後、日本船長協会を訪ね「船長、母校へ帰る」講演を開催して欲しい旨要望し今回の開催に至った。€
熊本県の中央部から有明海へ宇土半島が突き出ており、その突端から天草への門戸である「天門橋」を渡ると、そこはキリシタン弾圧で知られ1637年に起きた天草・島原の乱で有名な天草四郎時貞の出身地「大矢野島」であり、島の中央部の大矢野氏の居城の跡に大矢野中学校がある。同じ大矢野氏の所領であるが天草五橋を渡りきって、更に2~3km程不知火海側へ走ったところに阿村中学校がある。€
天草・島原の乱により島民の約半分が討ち死にしたと言われ、その後の入植により人口は回復したもののさしたる産業もなく、漁業、農業が中心であったが、四方を海に囲まれており、遣隋使の頃から海上交通は発達し、肥後平野の米穀の輸送、石灰石・セメントの輸送、三池炭の輸送と国内海運業が盛んになり、今回講演した中学校の校区である大矢野地区、阿村・松島地区は約69社、77隻の内航船舶を有する日本でも有数の海運都市である。€
特に阿村中学校は生徒の約40%が海運・船員に関係のある子弟であるというから、非常に海運や船員職業に関心が高いところである。€
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2.講演会

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平成20年6月11日、熊本空港は折からの梅雨前線の停滞で大雨となり、熊本空港への着陸が危ぶまれる程であったが、地元海運会社の吉川夫妻の出迎えを受けて、奥様の運転で一路天草へ向かった。途中大矢野中学校の佐藤先生から、「大雨の為に生徒は全員集団下校させた、明日の天候が心配である」旨の連絡が入り明日の定刻開催が危ぶまれたが、翌12日になると小雨となり09:00頃には陽がさすほどとなった。€
講演は午前中に大矢野中学校、午後阿村中学校で実施された。€
参加人数は、

大矢野中学校
生徒 464名
学校関係者 40名
保護者 8名
海運関係者 3名
阿村中学校
生徒 94名
学校関係者 13名
保護者 15名
海運関係者 5名


大矢野中学校では、生徒代表の開会宣言、生徒により講演会を進行する形で進められ、谷校長先生のご挨拶では、「四面を海に囲まれた日本では経済活動に海運は欠かせない存在であり、今日は船長を経験された講師の方にわくわくするような話が聞けると思いますので、広く世界に目を向けて自分の将来を考える参考にして欲しい」旨の内容であった。€
阿村中学校では、窪田有紀先生の司会ではじまり、橋本校長先生のご挨拶では、「日本は周囲を海に囲まれ、この阿村も又海に囲まれおり、海に関係する仕事に従事している父兄も非常に多いところです。皆さんの中にも将来船に乗りたいと考えている人もいるでしょう。ある船長さんは『船には目的港があります。目的港があるから嵐にも耐えて港へ入りその喜びを噛締める事が出来るのです。人生も同じで私は2度受験に失敗したが、目的をしっかり持っていたので、今では目標通り船長として仕事をしている』とおっしゃっていました。今日は『海と船』に関するお話をして戴きますが、自分の人生の目標を考える機会にして欲しいと思います」との内容であった。€
両校とも校長先生から講師及び関係者の紹介の後、森本会長の講演に入った。€
森本会長は、大矢野中学校の第一印象を「校長室のトロフィーの数の多い事にびっくりすると共に当校の積極的な校風を感じた」また、「朝の授業開始前の綺麗な歌声は心をなごませ、昔の映画【24の瞳】を思い起こさせてくれた」。€
阿村中学校の第一印象については、「玄関に飾られた花の素晴らしい事、こんなに素敵な花一杯で歓迎され心地良い気持ちになった」また、「廊下で出会う生徒の明るい元気な声での挨拶はすばらしい。何処の社会へ行っても挨拶は非常に大切な事であり、受ける私どもを気持ちよくしてくれる。今後も是非続けて戴きたい」と述べたあと講演に入った。€
森本会長の海と人との関係の話、特に最初の三好達治の詩からの引用や、海水と羊水の話には、生徒達は勿論の事、先生や父兄の方々の反応が非常に大きかったように感じた。€
さらに、日本は世界で6番目の海洋を持った国であるとの説明にも驚きを示しており、次の講演内容に生徒達を引き込んだように思えた。€
貿易量の99.7%が海運による輸送だという事や、海がCO2の70%を吸収している事へ驚きが生徒の顔つきから覗われた。€
DVDを観ている生徒が目を光らせたのがスエズ運河とパナマ運河の通峡についての説明であったと感じた。€
池上顧問の講演は、先ず生徒をリラックスさせるように「大きく背伸びをしてみよう」と自ら背伸びをして眠気を覚ましてから開始た。€
船員という職業を選んだ動機や時期、海の役割、国連海洋法により6カ国と国境を接しており国際的な利害関係が生じる事、綺麗な海を守る為にも国際的取組みが必要な事、海賊に襲われインド洋を救命筏で漂流する乗組員の様子、救助された時の喜び、思い出の航海として北欧への石炭輸送で市民に感謝され船長としての職業にやりがいを見出した事等など、生徒達に大きな感動を与えたようである。€
池上船長は、「皆さんも自分の進路を考える年代になっていますが、先ず『夢』を持って下さい。出来るだけ大きな『夢』を持って、それに向かって進む時に一番大切な事は、先ず健康な身体です。身体を鍛え体力をつけて、自分の夢に向かって勉強してくれるようエールを送り私の講演を終わります」と講演を締め括った。€
大矢野中学校と阿村中学校で出された質問は以下のようであった。€
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【大矢野中学校での質問】€
(1)仕事で苦労した事はどんな事ですか?€
(2)一度航海に出るとどの位日本に帰れないのですか?€
(3)船員職業を選んだ切っ掛けは何ですか?€
(4)収入はどのくらいでしょうか?€
(5)何カ国の言葉がしゃべれますか?€
(6)航海した距離はどのくらいですか?€
(7)仕事を止めたいと思った時がありますか?€
(8)船は何年使えるのですか(船の耐用年数)?€
(9)輸入するもので何が一番多いのでしょうか?€
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【阿村中学校での質問】€
(1)海賊船と普通の船の見分ける方法はあるのですか?€
(2)年収は幾らぐらいでしょうか?€
(3)外航船は英語が必要とのお話ですが、内航船では英語の勉強はしなくとも良いのですか?€
(4)船員になって「良かったナー」と思った事、「嫌だなー」と思った事を教えて下さい。€
(5)スエズ運河とパナマ運河の通峡料金は幾らぐらいですか?(父兄の質問)€
(6)主人は最近地元のフェリーから内航船に移り乗船しました。3ヶ月後に休暇と言っておりましたが、外航船の場合は2ヶ月との話もありました。未だ主人が乗船して1週間しか経ちませんが、留守を守る私はとても淋しいです。€
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〈大矢野中学校〉
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〈阿村中学校〉

3.記念品の贈呈

森本会長より両校に記念品の贈呈が行われた€
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4.御礼の言葉

両校の生徒代表から「御礼の言葉」があり、阿村中学校では森本会長、池上顧問へ花束の贈呈があった。€
(1)大矢野中学校 御礼の言葉概要€
今日はお忙しい中を私達の中学校校へおいで戴き貴重なお話をして頂きありがとうご座いました。€
日本の貿易の約99%が船による輸送だと言う事、船が環境にやさしい事を知りました。€
私の家も海運業をやっており、今日学んだ船舶の重要性について家族で話し合ってみたいと思います。€
また、私達の為にDVDや下敷きを戴き本当にありがとうございました。€
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(2)阿村中学校 御礼の言葉概要€
今日はお忙しい中を私達のために海と船の講話をして頂きありがとう御座いました。€
世界の海を鉱工業製品や食料を運んでいる種々な船を知る事ができ、海賊の話や船長さんになる道について教えて戴きありがとうございました。€
今日の講話を私達の将来を考える参考にしたいと思います。今日は本当にありがとう御座いました。€
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5.むすび

昨年7月に話があってから11ヶ月、両校とも学校側が積極的に対応してこられ、両校を同時に同一個所に集めてという事も考えたが、結果として1日に2箇所で実施することになった。€
海運会社が多いだけに地元の関心も高く、父兄及び関係者の出席も多く講演会を盛り上げて戴いた。€
地元中学校のOBである田崎熊本海運組合理事長、空港までお出迎え戴いた吉川夫妻にこの場を借りて厚く御礼を申し上げたい。€
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熊本日日新聞
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お礼の言葉、生徒達の作文

生徒達の作文////////


LastUpDate: 2024-Dec-17