第185回 愛知県高浜市立高浜中学校

伊勢三河湾水先人 久永 一男/(一社)日本船長協会事務局   

愛知県高浜市立高浜中学校

 

1.はじめに

 現在伊勢三河湾の水先人である久永一男船長の母校、愛知県高浜市立高浜中学校で「船長、母校へ帰る」の講演を実施しました。
 今回の講演は、久永船長の同級生で地元高浜市にて市議会議員をされている神谷利盛さんのご紹介で開催に至ったものですが、同氏からの寄稿と久永船長の所感を合わせて、以下に紹介します。

2.開催日時

 平成29年11月10日(金) 13:40~14:45

3.開催に至った経緯

(神谷利盛氏より寄稿)
 高浜市は、愛知県の西三河地方にあり名古屋市から約1 時間の場所にあります。刈谷市、安城市、碧南市といった、トヨタ系大手部品メーカーの本社所在市に囲まれた、人口4 万8 千人、面積13平方キロメートルほどの小さな町です。三州瓦として有名な陶器瓦の生産では、全国シェアが70% あるものの、少子高齢化、一戸建て住宅の着工件数の減少等により、地場産業は衰退しています。
 一方、トヨタ系部品メーカーの下請け企業が多く、周辺市に勤務する従業員の方も多いため、人口は増加傾向にあります。このような背景の中で、行政は子供たちに「夢」を与えるしくみを模索しています。例えば、職業体験の一環として、コンビニ、花屋、スーパー等での実習に取組んではいるものの、中学生に与える「夢」としては、ささやかなものにすぎません。
 この時期に持つ夢は、J リーガーだったり、プロ野球選手だったり、宇宙飛行士であってもいいと思います。
 そうしたなかで、夢を実現した人で、かつ自分たちとフィールドを共有できる存在の人に当時思っていた「夢」とそれをどのように実現したかを語ってもらう、そのような場面を作るのが大人の役目ではないかと常々強く思っていました。
 そこで、高浜中学校OB で、私の親友でもある久永一男氏にお願いし今回の講演に至りました。
 日本経済を支える巨大船舶の船長で、活躍するフィールドが世界と言う、生徒たちにとってはまさに「夢」を実現した人が同じ中学校の先輩にいると言うことを是非とも知らせてあげたいと思い、市教育委員会に働きかけ、今回の講演の実現に至りました。ご協力いただきましたことに深くお礼申し上げます。

4.講演内容

一年生約280人及び教師・父兄約20名を対象に以下の内容の講演が行われました。
・船長の仕事
・船乗りになった動機
・日本と海運とのかかわり
・女性の活躍
・船内の仕事
・世界で活躍した様子 等

5.講演後の神谷さんの所感

 テーマは、「ようこそ先輩!”船長のお話を聞く会」と言う設定で生徒と父兄とに告知されていました。先生は冒頭の挨拶のみ。後は、生徒によって紹介から、講演内容の説明、最後の挨拶まで進行されたのには少し驚きました。
 船長の制服・制帽で登壇した久永氏は、まるで宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長のように見えました。中学生のときに、世界を相手にする仕事をしたいので、パイロット(航空機)、F 1 レーサー、戦場カメラマンになるんだ、と決心し、その後ちょっと挫折したものの、船で世界の海を駆け巡るという、世界で活躍する「夢」を実現したということは、同級生としてもとても魅力のある話です。
 その後、船長時代に同乗した新米女性航海士が今年船長に昇進し、彼女もこれから船長として世界中を航海することになるという説明が続き、女子生徒の関心をつかんだと思います。
 日本経済は、貿易で成り立っており、その貿易の大部分が船舶に依存しているという説明は、社会科の教科書で学習する内容とは、迫力がずいぶん違ったと思います。
 船員になるための方法もきちんと説明していただき、5 年後には、何人かの生徒がきっと商船系の大学への進学を希望するのではないかと思います。
 講演前に、質問が出るだろうかと少し不安な会話もしていましたが、2 件の質問が有りましたので披露します。「(船に乗って)日本から海外に行き、そこで船を乗り換えて仕事をすることはありますか?」「多国籍の人と一緒に仕事をするとのことですが、宗教上食事の問題があると思います。どうしているんですか?」
 1 時間の講演時間では、少し足りなかったような気がしました。退席のときに、拍手をいただきましたが、入場したときよりも明らかに大きな拍手でした。
 こんな田舎町ですが、生徒の何人かは日本人名でない子もいますし、スーパーへ行けば、外国語が普通に聞こえてきます。昔と違い、今は外国人と接する機会も多く、SNS により世界中の情報が瞬時に入手できます。
 一方、新聞報道等によれば、海外留学を希望する学生は減少し、企業に就職しても海外勤務を希望する新入社員は少ないとのことです。私自身も前職が商社マンであったので、若者は日本にとどまらず、世界に飛び出して活躍して欲しいという気持ちが強くあります。
 今回の講演をきっかけに、生徒が「夢」のひとつに、「世界で活躍する」と言う選択肢を選んでくれたとしたら成功だったと思います。
 生徒の感想文にあったキーワードは、「I’m sorry」「2 人で操船」「チームワーク」「女性の活躍」など。そして、もっとも多かったのは、「夢をあきらめないで実現したことに共感した」と言うものでした。
 この講演の狙いが、生徒に届いたようでとてもうれしく思いました。ご協力いただきました、久永一男氏、鐘ヶ江淳一氏に対し、改めましてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。


(神谷 利盛 記)


おわりに(講演者所感)

 今回の講演に際しては日本船長協会からパワーポイント用資料の提供や講演の実技指導等々多大なご支援を頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。
 神谷氏から講演の依頼を受けた時にはどうなることかと心配になり、また直前まで私の話が本当に生徒に受け入れられるのかと不安もありましたが、講演中生徒の皆さんが素直に聞いてくれ、感想文でも私の思いが伝わったことが確認でき、今ではこの講演をやってとても良かったとしみじみ感じています。

(久永 一男 記)

生徒達の感想文

生徒達の作文/

 


LastUpDate: 2024-Apr-25